事故から学ぶ 山手線架線事故(1)
昨年11月7日、東京で架線を張っている重りが落ちて、山手線と京浜東北線が5時間に渡って不通となる事故がありました。17万人に影響が出たそうです。事故の概要。重りの写真(読売新聞)。
約1.5km間の架線をピンと張っておくためにバランサーと呼ばれる重り約500kgを吊り下げています。重りを吊っている鉄棒が破断したのです。
この事故について、木村勝美氏と中尾政之氏がコメントしています。(木村氏「検査機器ニュース第1087号」、中尾氏「検査技術 Vol.11 No.4」)
対照的なアプローチで、「失敗(事故)からいかに学ぶか」という点で、私自身関心のある領域ですので、感想を書いておきます。お二人に共通しているのは、当事者ではないこと、またおそらくは新聞などの報道が情報源であり、現場の第1次情報を得られるところにはいないということです。
まず木村氏のアプローチから。(図をクリックすると大きくなります)
木村氏は、新聞やテレビの報道から得た情報から、鉄棒の破断原因に着目して考察を始めます。16年間使われたことからする「腐食によって細くなった説」や「振動による小さな力でも繰り返し加われば疲労破壊するのだ説」に対して、科学的な考察をくわえて「考えられない」と指摘しています。
しかしテレビに映された破面は、疲労破面にみえることから、振動以外に大きな力が働いていないかを、重りと重りを吊る鉄棒の形から、ある仮説を立てています。謎解きとして面白いので、仮説の中身は書きません。関心のある方は原文を読んで見てください。
この仮説から、なぜ最近になってこのような事故がおきるのか、山手線をめぐる状況にその遠因があることに触れています。
木村氏とは面識がありまして(私にとって厳しくも暖かい大先生なのですが)、私への電話の中で「作業の状況や、作業者の性格まで目に浮かぶのだよ」といわれていました。
限られた情報でありながら、直接的な原因そのものに知見を駆使してアプローチしていてます。直接的な原因から、背景や作業者の性格など、普遍的に教訓としていけるきっかけになる現象について指摘しています。私は、木村氏のアプローチが正しいと思います。木村氏の説が正しいかどうかは分かりませんが、もしずれているとすれば、「ではなにが?」ということが問題になり、いまだ私たちが知らないことが出てくるのです。
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コメント
形がよくわかりません
投稿: くるみるく | 2008年11月24日 (月) 21時11分
くるみるく さん
こちらのブログは引越しをしています。引越し先に転記をして、お返事はそちらに書きます。
引越し先は下記です。
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投稿: SUBAL | 2008年11月24日 (月) 22時43分