« 2006年3月 | トップページ | 2006年5月 »

2006年4月30日 (日)

金属疲労

 昨年11月7日に起きた山手線の事故の件で、2つの寄稿文について先に書きましたが、その件で、電話やメールでいくつか議論をしています。その中で、改めて勉強をしています。

Nisijima木村勝美氏からは、「金属疲労とは何か」というタイトルの解説を送っていただきました。東京理科大学の西島敏氏が書いたものです。これがとても面白い。これまで金属疲労について勉強してきたことが、一気につながって知識の輪となって頭の中が整理されていくようです。実に快感。

例えば、疲労亀裂の初期にある「突き出しと入り込み」、そういうことがあるのは知っていたけれど、どのくらいのオーダーなのかは知りませんでした。10nmのオーダーであることが示され、そのことが「突き出しと入り込み」のメカニズムと関係していること、疲労強度を上げる手段の有効性を説明できること、などが簡潔に整然と書かれています。私にとっては、目からうろこでした。

「工学ではOrder Estimateが大切なのだよ。」と別の件である方から最近言われました。まさに、このことですね。

どこそかの教授が疲労割れのサイズを1桁間違うなんてのは、単なるうっかりではないのですよ。

西島先生の解説文では、破壊力学の観点から疲労破壊を評価していく方法についても、分かりやすく記述されています。

この方、もう少し具体的なケーススタデイなどを入れてまとまった本にしていただけないかな。

にほんブログ村 科学ブログへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年4月16日 (日)

事故から学ぶ 山手線架線事故(2)

中尾政之氏のアプローチについて。

Nakao_1 「検査技術4月号」に掲載された中尾氏の解説文は、「深海無人探査機『かいこう』ビークルの迷子に学ぶ」の表題にあるように、山手線架線事故を主題にしたものではありません。昨年出版された中尾氏の著書「失敗百選」(森北出版)に収録されている「かいこう」の事故について解説をしています。その中で、左に示したように、山手線の架線事故について触れているのです。

これを読んで驚くのは、あまりに現実や現場に無頓着だということです。棒鋼の破断のしかた、破断の直接の原因には全く関心は払われていません。

また、地下鉄で行われている天井の剛体架線が山手線に適用できない理由が、「やたらと支柱が必要となる」としています。もしかしたら、この方は架線の重りが温度差による熱膨張によって架線が垂れ下がるのを防止するためについていることを御存じないのかもしれない、と思ってしまいました。(JRでは温度変化量を60℃と想定している)

Nakaozucまさかなぁ、と注意深く読んでみると、「重りが切れてもワイヤは緩むが垂れ下がることはない」改善策として示されている「定張力機構」の図。わかりにくい図ですが、どう見ても夏場電線が延びて長くなったときに、架線が電車との位置関係でほぼ同等の位置にあるようにする機構とは思えません。.

何故、このような機構が必要なのかという現実を捨象したところでは、現場の事故再発防止としても、また他山の石としても、いかなる教訓化も無意味です。

中尾氏は、東京大学の教授でご自身が書いているとによると、「『失敗学』と命名した文理融合の社会技術を、この5年間研究している」という「失敗学の研究者」とのことです。

中尾氏によると、5年間の研究で分かったこととして「失敗学=失敗のナレッジマネジメント手法の開発」だと、書いています。ナレッジマネジメント手法って、カタカナで書くと分かりにくいけれど要するに「知識の生かし方」ということでしょう。

中尾氏の5年間の研究成果による「ナレッジマネジメント手法」というのが、過去の失敗と現在の自分の状況との類似点に気づくこと、なのだそうです。

「ナレッジマネジメント手法」を具体的に適用すると、「かいこう」の事故も山手線架線事故も、中尾氏自身が経験した「掃除機の電源コードを手元から引っ張ってコンセントを抜いたときの断線」と同じ、と気づいたそうです。そして「引っ張らないようにする」ことが解だというのです。中尾氏の掃除機のコードが切れたところから、「引っ張ることが良くない」といわれてもねぇ。

正直なところ唖然とします。中尾氏はレインボーブリッジは渡れないでしょうし、ビルでエレベーターにも乗れないでしょう。現代社会で構造部材として使われている鉄鋼は「引張」に強く、その特性を生かした「かたち」の恩恵によくしていること、引張の力以外にも破壊につながる力はあること、力を受けながらも壊れないようにすることが技術であること、こんな初歩的なことを東大教授に教えなければならないのでしょうか。

中尾氏に言わせれば、私のは古い考えであって「失敗学の新しい成果を理解できていないだけ」ということかもしれません。でも、私から見れば、中尾氏のアプローチは「答えで問題を解く」やり方そのものです。答えから現実をいくら解釈しても、実践的な教訓にはなりえません。で、その「答え」がお茶の間ワイドショー以下。

実は、中尾氏が他の事故事例について解説しているいくつかの文章にたいして、違和感をかつて感じていました。「ちがう」とは思うのだけれど、何でそうなるのかは分かりませんでした。今回の中尾氏の文章を読んで、はっきりと中尾氏の「失敗学の失敗」を確信しました。これはいかんわ。

参考 バランサーについて

| | コメント (0) | トラックバック (2)

事故から学ぶ 山手線架線事故(1)

昨年11月7日、東京で架線を張っている重りが落ちて、山手線と京浜東北線が5時間に渡って不通となる事故がありました。17万人に影響が出たそうです。事故の概要重りの写真(読売新聞)。

Omori_1 約1.5km間の架線をピンと張っておくためにバランサーと呼ばれる重り約500kgを吊り下げています。重りを吊っている鉄棒が破断したのです。

この事故について、木村勝美氏と中尾政之氏がコメントしています。(木村氏「検査機器ニュース第1087号」、中尾氏「検査技術 Vol.11 No.4」)

対照的なアプローチで、「失敗(事故)からいかに学ぶか」という点で、私自身関心のある領域ですので、感想を書いておきます。お二人に共通しているのは、当事者ではないこと、またおそらくは新聞などの報道が情報源であり、現場の第1次情報を得られるところにはいないということです。

Kimura まず木村氏のアプローチから。(図をクリックすると大きくなります)

木村氏は、新聞やテレビの報道から得た情報から、鉄棒の破断原因に着目して考察を始めます。16年間使われたことからする「腐食によって細くなった説」や「振動による小さな力でも繰り返し加われば疲労破壊するのだ説」に対して、科学的な考察をくわえて「考えられない」と指摘しています。

しかしテレビに映された破面は、疲労破面にみえることから、振動以外に大きな力が働いていないかを、重りと重りを吊る鉄棒の形から、ある仮説を立てています。謎解きとして面白いので、仮説の中身は書きません。関心のある方は原文を読んで見てください。

この仮説から、なぜ最近になってこのような事故がおきるのか、山手線をめぐる状況にその遠因があることに触れています。

木村氏とは面識がありまして(私にとって厳しくも暖かい大先生なのですが)、私への電話の中で「作業の状況や、作業者の性格まで目に浮かぶのだよ」といわれていました。

限られた情報でありながら、直接的な原因そのものに知見を駆使してアプローチしていてます。直接的な原因から、背景や作業者の性格など、普遍的に教訓としていけるきっかけになる現象について指摘しています。私は、木村氏のアプローチが正しいと思います。木村氏の説が正しいかどうかは分かりませんが、もしずれているとすれば、「ではなにが?」ということが問題になり、いまだ私たちが知らないことが出てくるのです。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年4月14日 (金)

「天の川銀河」の対数螺旋

望遠鏡で見ることのできる渦巻銀河の螺旋が対数螺旋になっていることを、螺旋を調べるソフト「Spiral」で確認をしました(宇宙の螺旋を調べる)。そのとき思ったのは、私たちの地球が属している「天の川銀河」の螺旋はどうなっているのだろうか、ということです。観察点を天の川銀河の外はるか遠くに置かねばならないことになり、自分の命のある間には無理なのだろうなぁ、と漠然と思っていました。

今日、なにげなくネットをさまよっていたら、「電波データで描き出された天の川銀河の3次元地図」というタイトルの研究記者発表のページを見つけました。中西裕之氏(国立天文台野辺山宇宙電波観測所・研究員)と祖父江義明氏(東京大学天文学教育研究センター・教授)の共同研究とのことです。

「天の川をくまなく観測して得られた膨大な量の中性水素原子(HI)と一酸化炭素分子(CO)の電波スペクトルデータを解析して、私たちの住む天の川銀河の3次元的な全体像を初めて描き出しました。」

Amanogawa   というのです。天の川銀河を上からというか正面というか、ともかく螺旋の腕を見ることのできる図も掲載されているではありませんか。これは、「Spiral」で調べてみるしかありません。図中の赤線と青線は「Spiral」で描き加えたものです。

対数螺旋はアンモナイトやオウムガイさらに巻貝に見ることができます。中心からの直線と螺旋の交点での接線とのなす角(b)がどこでも等しくなることから等角螺旋とも呼ばれます。

「天の川銀河」の対数螺旋には2種類ありそうです。写真の赤線はb=78.1度、青線はb=74.9度です。

M101・M51・M74では、b=72.8度で黄金矩形にそう螺旋と一致したのだけれど、「天の川銀河」では微妙に異なるようです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年4月 5日 (水)

韓国旅行(3) つまようじ

食べ物では、焼肉とキムチは口にあいませんでした。でも板門店近くのレストランで食べたちじみと、最後の昼食で出た石焼ビビンバは美味しかったですね。石焼ビビンバは、適当におこげができて、その香ばしさがなんとも懐かしく嬉しい味でした。

箸や食器がどこでもステンレスであったのはなじめませんでした。食事が進むにつれて、端の重さが気になってきました。鍋の横に置いておくと、熱くなっていてびっくりしたり、木の箸に慣れているせいか違和感がありました。

Koriantoothpick そこで気になったのが「つまようじ」テーブルにはありません。ガイドさんに聞くと、レジのところにあるとか。帰り際に何本かいただいてきました。写真にあるように、カラフル。明らかに日本のものとは違う。一見プラスチックにみえますが、原料はハルサメと同じだそうです。

10数年前に、環境問題に考慮して一定規模以上のレストランでは木製のつまようじや割り箸を使うことを禁止する法律ができたのだそうです。

そういえば日本でも10数年前歌手の加藤登紀子が割り箸を使わないキャンペーンを始めて撤回するという騒ぎがありましたっけ。

木製の割り箸やつまようじは白樺でできています。韓国では中国からの輸入だそうです。白樺の林はないのでしょうか。

強さは、木製のつまようじとほぼ同等かなという感触ですが、ぽっきっと折れてしまうので脆い=靭性には欠けるかもしれません。

「つまようじブリッジコンテスト」の普及を図る際に、韓国ではこの法律が壁になるのかな?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年4月 2日 (日)

韓国旅行(2) イミテーション

ガイドさんに案内されて、東大門市場・南大門市場・仁寺洞に行きました。

バックや時計のブランド品の偽物を売る店があちらこちらにあり、そのうちのひとつの店員の呼び込み、「社長!完璧なニセモノがあるよ」。

えっ!と思いました。本物ではない、だけど完璧なのだという。ニセモノという後ろめたい響きと、完璧という自信に満ちた響きが、あたかもバルトークの和音のように不調和に調和して、頭骸骨の中を跳ね飛んでいるようでした。

技術の習得は模倣から始まる。優れたものの寸分たがわぬイミテーションを作れるということは、本物を作った人と同等の技術を持つということになります。陶芸の世界では、加藤唐九郎氏の永仁の壺事件が有名です。

Seiji3私は、本物であるブランド品に何の価値も見出せないので、そのニセモノがいかに完璧でも興味はありません。

でも本物を越えるニセモノもある。

仁寺洞を歩いていて、冷やかしのつもりでとあるやきもの店に入りました。入ったとたん、棚の奥にある青磁の鶴首型一輪挿しが目に止まりました。静かで凛とした佇まいに一目ぼれをしてしまいました。値段を聞くと・・・とても手が出ないなぁ、ため息をついてしまいました。すると店の奥から70歳ぐらいと思われる白髪の男性が現れて、「その作者、いいでしょう・・」と綺麗な日本語で話しかけてきて、同じ作者の鶴首で貫入が入ったものなら1/4の値段だといいます。

Seiji5貫入というのは生地と釉薬の収縮率の違いによってできるひび割れのことです。中国では青磁は「玉」(極上の翡翠の玉)のイミテーションとして扱われるので、貫入がないものが良いとされます。韓国でもそうなのでしょう。しかし、日本では萩や唐津の陶器はもちろん青磁でも貫入は、景色・模様として尊ばれます。昔書いた駄文ですが・・「損傷許容の美意識

示された鶴首の貫入は美しくなかったので、同じ作者の貫入の入った花瓶を購入しました。赫山方徹柱という名の作者です。名前は知りませんでしたが、花瓶の佇まいは作者の人柄が出るといいます。「玉」のイミテーションなどではな い、韓国青磁の本物の美しさだと私は思います。

にほんブログ村 美術ブログへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年4月 1日 (土)

韓国旅行(1) 板門店

3月の29日~31日の2泊3日で韓国へ行ってきました。30日には南北分断の最前線である板門店に行き、短時間ではあリますが軍事分界線を越えて北朝鮮の支配区域に入ってきました。

Pamunjom1_1 最初の写真は、板門店の南側展望台から北方向を見たところです。背後の建物は北側兵士の事務所。手前側が会談所。会談所は7棟あり、4棟が北側の管理、3棟が国連軍側管理とのこと。

本会談は、UN管理の建物の中で行われる。今回その中に入ることができました。

Pamunjom2 2番目の写真は、UN管理の会談場の南側入り口側から見たところ。兵士は体半分を建物側に入れて監視をしている。兵士の頭近くに見える地面で色が変わっているところが南と北の軍事分界線。兵士は20代前半で若い。北側の兵士も見えたが、やはり若い。

3番目の写真は、本会談場の中、軍事停戦委員会が開かれるテーブルを北側から写している。テーブル中央にマPamunjom3_1イクが置いてあり、そこが境界。

観光ツアーとして組まれており、ガイドさんがソウルからの道程で説明していきます。このガイドさんの説明が、よく練られていて「新米のガイドです」といいながらとてもクレバーでした。話がとてもうまい。

同民族同士が殺し合い、生き別れになった朝鮮戦争勃発のいきさつや、軍事的攻防を説明していました。「歴史にもしもはないけれど」といいながら、日本のポツダム宣言受諾がもう1週間早ければソ連の参戦はなく、またはあと10日遅ければ韓国の臨時政府が「開戦を宣言をして韓国が戦勝国になっていた、という話は、8月15日の韓国側からの受けとめとして、なるほどと思いました。ただ、彼女がもうひとつ言わなかった「もしも・・・」もあるだろうことは、容易に想像できます。

非武装地帯で農業をやっている人がおり、行動は制限されているものの、兵役・納税の義務を免除されていて、年収で1000万円を越しているという話や、国旗掲揚塔の高さを競う競争など、ちょっと行っただけで分かるものはもちろん限られるでしょうが、現地に行ってみると「百聞は一見にしかず」ということを実感しました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2006年3月 | トップページ | 2006年5月 »