オウムガイの螺旋に黄金比があるというのは「ガセ」であることを書いて(「自然の中の黄金比」)から1年間たちました。久しぶりに「黄金比 オウムガイ」や「黄金比 自然」で検索すると、少なくなっていましたね。数学のページでも微妙に書き換えてありました。先生たち読んでくれたのかな?
ただ、「ダ・ヴィンチ・コード」の記述を鵜呑みにして「不思議だ」とか「神秘だ」とか書いているページはたくさんあるようです。
調べてみれば良いのですが、調べて違っていてもまだ信じたい人たちもいるようです。「自分の体が標準ではない」とか「厳密に計ればそうなるのかもしれない」とか自分の調査の結果を否定してあくまでも信じようとするのは、私から見ると不思議な感覚です。出てきた事実にこだわり、そこから自分の頭で考えるのが、科学とか技術の原点でしょう。
中学生が黄金比について調べたレポートが公開されていました。茨城県阿見町朝日中学の女子生徒2名のレポート「黄金比は美しい?」です。調査も面白いし19枚ものレポートをまとめる力もなかなかのものです。
調査の中で、黄金比の長方形を含む6種類の長方形を示して、「美しいものを選んで」というアンケートをとっています。3年生女子を除く、1年生から3年生の男子も女子も22~29%の間になったそうです。3年生女子は、38%。さらに先生に同じアンケートをとると、63%になったそうです。
17%が1/6ですが、黄金矩形の配置は、配置によって選ばれやすい位置にあるので、20%代前半は、それが意味があって選ばれたとはいえないでしょう。面白いのは「黄金比は美しいはず」という予見があると思われる「3年女子(調査者の所属する集団)」と先生では、黄金矩形の選択率は高いということです。
そこからの彼女たちの評価は、「やはり先生方は、中学生より歳を重ねているだけあり形を見る目が違う」というものでした。黄金比の四角形に美しさを見出さなかった集団を「未熟」と切り捨てています。どうしてだろう。子どもの目のほうが正直なのではないのかな?
少なくても彼女たちの調査が明らかにしたことは、「黄金比の四角形が美しい」と感じる感覚は、経験や年齢とは無関係に自然にかつ普遍的に人間に備わっているものではない、という事実なのです。
また、彼女らは、身近なものにある黄金比を調べていっています。比が約1.6になるものをたくさん挙げていますが、ほとんどが人工物。自然のものは、教科書に載っていたという「蝶々」ひとつだけでした。彼女らの調査のきっかけとなった先生の言葉の中に「自然の中にもある」となっていたのに、なぜ自然物はリストアップされていないのでしょう。
私は想像しています。調べたけれどなかったのだろうと。だとすると、中学生君にあえて言いたい。「ないというデータも貴重なデータですよ」「あなたたちの調査データを素直に読むともっと面白いことが分かってきそうですよ」
先生にも言いたい。調べもせずに「黄金比は自然の中にもある不思議な比」というような非科学的な嘘は謹んでほしいものです。また、生徒の調査に予断を排して向き合ってほしいです。
裸の王様は黄金の服など着てはいないのです。
先生のいうこと、エライ人がいうことを、「必ず正しいはず」と鵜呑みにしないこと。本当かどうか調べること。予想したものと違った結果が出たら、前提にしたことから見直すこと。そこにあたしい発見がある。がんばれ中学生。
追記
「この黄金比は,人間がつくり出したのではなく,自然界にも多く存在し,科学的な理屈だけでは証明できない神秘的なものである。」と書いてある中学数学の指導案(このページの「少人数指導事例」と「指導案黄金比」)もあるのです。数学の先生、調べもせずに簡単に科学を投げ捨てて「神秘」を語らないでください。先生の思考方法の非科学性を表現するものでしかありません。しっかりしてください。頼みますよ。
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