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2006年5月 7日 (日)

黄金比 調べること

 オウムガイの螺旋に黄金比があるというのは「ガセ」であることを書いて(「自然の中の黄金比」)から1年間たちました。久しぶりに「黄金比 オウムガイ」や「黄金比 自然」で検索すると、少なくなっていましたね。数学のページでも微妙に書き換えてありました。先生たち読んでくれたのかな?

ただ、「ダ・ヴィンチ・コード」の記述を鵜呑みにして「不思議だ」とか「神秘だ」とか書いているページはたくさんあるようです。

調べてみれば良いのですが、調べて違っていてもまだ信じたい人たちもいるようです。「自分の体が標準ではない」とか「厳密に計ればそうなるのかもしれない」とか自分の調査の結果を否定してあくまでも信じようとするのは、私から見ると不思議な感覚です。出てきた事実にこだわり、そこから自分の頭で考えるのが、科学とか技術の原点でしょう。

中学生が黄金比について調べたレポートが公開されていました。茨城県阿見町朝日中学の女子生徒2名のレポート「黄金比は美しい?」です。調査も面白いし19枚ものレポートをまとめる力もなかなかのものです。

調査の中で、黄金比の長方形を含む6種類の長方形を示して、「美しいものを選んで」というアンケートをとっています。3年生女子を除く、1年生から3年生の男子も女子も22~29%の間になったそうです。3年生女子は、38%。さらに先生に同じアンケートをとると、63%になったそうです。

17%が1/6ですが、黄金矩形の配置は、配置によって選ばれやすい位置にあるので、20%代前半は、それが意味があって選ばれたとはいえないでしょう。面白いのは「黄金比は美しいはず」という予見があると思われる「3年女子(調査者の所属する集団)」と先生では、黄金矩形の選択率は高いということです。

そこからの彼女たちの評価は、「やはり先生方は、中学生より歳を重ねているだけあり形を見る目が違う」というものでした。黄金比の四角形に美しさを見出さなかった集団を「未熟」と切り捨てています。どうしてだろう。子どもの目のほうが正直なのではないのかな?

少なくても彼女たちの調査が明らかにしたことは、「黄金比の四角形が美しい」と感じる感覚は、経験や年齢とは無関係に自然にかつ普遍的に人間に備わっているものではない、という事実なのです。

また、彼女らは、身近なものにある黄金比を調べていっています。比が約1.6になるものをたくさん挙げていますが、ほとんどが人工物。自然のものは、教科書に載っていたという「蝶々」ひとつだけでした。彼女らの調査のきっかけとなった先生の言葉の中に「自然の中にもある」となっていたのに、なぜ自然物はリストアップされていないのでしょう。

私は想像しています。調べたけれどなかったのだろうと。だとすると、中学生君にあえて言いたい。「ないというデータも貴重なデータですよ」「あなたたちの調査データを素直に読むともっと面白いことが分かってきそうですよ」

先生にも言いたい。調べもせずに「黄金比は自然の中にもある不思議な比」というような非科学的な嘘は謹んでほしいものです。また、生徒の調査に予断を排して向き合ってほしいです。

裸の王様は黄金の服など着てはいないのです。

先生のいうこと、エライ人がいうことを、「必ず正しいはず」と鵜呑みにしないこと。本当かどうか調べること。予想したものと違った結果が出たら、前提にしたことから見直すこと。そこにあたしい発見がある。がんばれ中学生。

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追記

この黄金比は,人間がつくり出したのではなく,自然界にも多く存在し,科学的な理屈だけでは証明できない神秘的なものである。」と書いてある中学数学の指導案(このページの「少人数指導事例」と「指導案黄金比」)もあるのです。数学の先生、調べもせずに簡単に科学を投げ捨てて「神秘」を語らないでください。先生の思考方法の非科学性を表現するものでしかありません。しっかりしてください。頼みますよ。

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コメント

今レポートの課題で黄金比に関して色々調べていえるところで、このblogを見つけた、とてもありがたいです。助かりました。ありがとうございます。あまり日本語が分からないんで、日本語でレポートを書くのが大変です。

投稿: kujira | 2006年5月19日 (金) 19時52分

kujira さん こんばんは
外国からの留学生さんですか?
黄金比って面白いと私も思っています。

でもあまりにも「ウソ」が多くてあきれています。ウソを信じている人に限って、「神秘」だとか「神の比」などと言っています。少なくても教育関係者は、調べもせずに安直なことを言ってほしくないと思っています。

ちゃんと調べてくださいね。がんばって。

投稿: SUBAL | 2006年5月20日 (土) 00時06分

はじめまして、lemacです。
「ダ・ヴィンチ・コード」を読んで、世の中そんなに黄金比があふれているのか、調べたくなってそしたら、Spiralに出会った次第で。

このソフトいいですね。知的好奇心が刺激されて。
子供が貝殻が好きなので、いろいろ測ってみようと思ってます。

投稿: lemac | 2006年5月31日 (水) 00時12分

lemacさん ようこそ

「このソフトいいですね。知的好奇心が刺激されて。子供が貝殻が好きなので、いろいろ測ってみようと思ってます。」

ありがとうございます。ぜひやってみてください。Spiralは螺旋を測る定規のようなソフトとして作りました。面白いことがいっぱい分かってくると思います。

ついでに、いろんなウソも見えてきてしまいました。黄金比が自然の中にたくさんある、なんてウソも、可愛いウソといってしまえばそれまでだけれど、数学の先生までが信じてしまっているのが、まずいと思ったわけです。

そして、Spiralを作った狙いの一つに、遊んでいくうちに自然に対数や微積分の意味が小学生にも体験的に理解できるかもしれない、なんてことを考えているのです。対数感覚、微積分感覚って呼ぼうと思っていますが・・・。私が作ったソフトの中では、一番面白いと、思っています。

投稿: SUBAL | 2006年5月31日 (水) 02時17分

うそなんかじゃない!黄金比は自然の中に沢山あるんだから!わかったようなこといわないで。

投稿: natumi | 2006年7月26日 (水) 15時41分

natumiさん ようこそ

「事実」なんてものは、多くの場合野暮なもですね。願望や夢を壊してしまう。

「ない」ということは難しいですが、「ある」というのは簡単なのです。「これもそうでしょ」と実例を示せばよいわけです。
 でもこれまで「自然の中の黄金比」といわれているものは、ウソばかりなのですね。

「黄金比」なんて、所詮「比」ですから、自然の中にも1.618に近い比になっているものもあるはずです。例えばこのブログの中にも書いていますが、アオイガイの殻や銀河M101やM51の螺旋は黄金矩形に沿う螺旋に近いのです。
でも、私が確認しているのはこれしかないのですよ。あとは、オウムガイとかミツバチの雄雌比とか人体のプロポーションとか、みんなウソ。

natumiさん、ぜひこれもあるよ、と教えてください。
どんなところにあるのか、私は知りたいのですよ。あるとして本当に黄金比が「美」と関係があるのか、知りたいのです。「美しい」と感じることはあるわけで、これは不思議です。でも、1.3が1.618と同じだ、なんてのはとても受け入れられないのですよ。その論理だと、私はベッカムにそっくりということになってしまいますから・・・。

投稿: SUBAL | 2006年7月26日 (水) 20時21分

 
 私が思うのは
最初に黄金比を発見した人、信じている人とかは本当にそうだからいってるのではないのですか?  “「ない」ということは難しいですが、「ある」というのは簡単なのです。”わたしは違うと思います。根拠がなくちゃいえないとおもいます。しかもそんなおおそれたこと。

まぁ私が言えることではありませんが。失礼します。

投稿: himitu | 2006年7月27日 (木) 19時12分

himitu さん こんばんわ

まぁえらい人がいっているんですからね。根拠があるだろうと思っても不思議はありませんよね。私も「うそ」と分かったときは唖然としましたよ。

黄金比も比だから、例えば長さが計れて割り算ができれば確認できるのですよ。1:1.618・・・になっているのか否か。

よくいわれる「オウムガイの殻」については、私の名前のところをクリックしてみてください。分かってもらえると思います。

私はひにくれものかもしれませんが、「エライ人がいっているから確認しなくても正しい」とは思わないのですよ。それにしてもこの「自然の中の黄金比」説はひどすぎる。

もうひとつだけ。黄金比は自然の中から発見されたものではありません。もともとは『ユークリッド原論』の中で作図法を伴って示された「外中比」が始まりで、これを「黄金比」と誰が最初にいったのかも分かっていません。

いつの間にか「美」の基準にされて、その根拠として「自然の中にある」という主張がなされています。

投稿: SUBAL | 2006年7月27日 (木) 21時31分

すいません ちょっとお聞きしますが、自然界に存在しないと言われる黄金比ですが、今の自然界(生態系)は人間が作りだした(いや作り上げた)物ですよね。だから黄金比も狂いが生じているのではないですか?

投稿: オオムガイ | 2007年4月 8日 (日) 08時35分

オオムガイさん ようこそ

対象物を見るときたいてい「仮説」を立ててみますね。

「自然界に黄金比は特別な比としてある」と言う仮説と「自然界に黄金比は特別な比としてはない」と言う仮説でどちらが現実をよく説明できるか、と考えてみてください。

今発見されているオウムガイやアンモナイトの化石は、人類発生以前です。人類発生以前から人類が生態系に影響することはできません。

今の自然は、人類のかかわりが反映されている「自然」であることも事実です。でも、「今の自然界(生態系)は人間が作りだした」とまではいえないでしょう。

人間も自然の一部であり、すべての生物・鉱物・元素に至るまで、今生まれて存在しているものが次の変化に影響を与えている、そういうことだろうと思います。

生態系や環境の「破壊」がよく言われますが、自然にとってはありうる変化のひとつに過ぎないのでしょう。ただ、人類にとっては自分たちの「生存環境」を壊していると言うことなのです。人類がいなくても自然は成立する、この事実の前に人類は知性を持って謙虚になるべき、と私は考えています。

投稿: SUBAL | 2007年4月 8日 (日) 09時50分

初めまして。こんにちは。
私は、美大に通っているので、今まで多くの先生方から黄金比について教えていただいてきました。それで私は特に調べもせず、教授が言ってるんだから…と黄金比に対して何の疑いも持っていませんでした。でも自分が絵を描くにあたって、どうしてもそれを上手く利用する事ができずにいました。それは自分の力不足とか経験不足もあるのかもしれないけど、言ってしまえば私自身そんなに黄金比が(先生方が言うほど)美しいとは、感じられなかったというのもあります。
それで今回こちらの文章を読ませていただいて、すとんと胸に落ちてきたので、コメントさせていただきました。
大昔の人間が地球は丸いという「事実」を信じられなかったように、あまり根拠の無い話(自分で調べたわけではない「事実」)を未だに多くの人が信じているという事がたくさんあるのかもしれませんね。
黄金比の神秘さには心惹かれる部分も私の中にはあるのですが。

投稿: わか | 2007年12月 7日 (金) 16時30分

わか さん ようこそ

このブログは、引越しをしていますので、引越しをした先に、お返事を書かせてもらいました。

http://subal-m45.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_7336.html

私の名前のところをクリックしても行けます。

投稿: SUBAL | 2007年12月 8日 (土) 10時46分

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Spiralなる便利なソフトを見つけた。 もし、ツメタガイの渦巻きが黄金矩形に沿う螺旋なら、その角度は72.8度になるそうなのだが、調べた結果69.7度でした。 っていうか、このソフト面白い。 調べたい画像を元に、渦巻きを書いていくんだけど、それがいい。 たとえば、画像ソフトにこんなのあったらいいなぁと思うのは、 写真画像に定規をあてて、始点と終点を決めるとそこの実際の長さを教えてくれる... [続きを読む]

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