« 超音波探傷入門 | トップページ | Tensegrity構造 »

2006年8月12日 (土)

JAL123便御巣鷹山墜落事故から21年

ジャンボジェット旅客機が墜落して、520人が犠牲となった事故から今日で21年です。

21年前の夏、私は北海道石油共同備蓄基地のはじめてのタンク開放(T-8)工事が大失敗して、その後始末を文字どうり不眠不休で取り組んで、へとへとになってやっと終わったところでした。24時間の現場仕事のあと8時間休んでそれから36時間の連続作業・・・それが終わりではなく地獄の1丁目でした。そのときそれぞれの立場で力をつくした人たちには、変な友情のようなものが生まれました。その後、タンク開放工事の革新を成し遂げるエネルギーになりました。

非破壊検査にかかわってきましたから、JAL123便の事故とその原因については関心を持ってきました。事故調の報告書の不徹底さから、巷には原因に関する「諸説」が流されています。怪しい珍説もたくさんあります。

今年発刊された1冊の本を紹介します。

寺田博之著「わかりやすい構造破壊の防止技術-破壊力学の基礎から学ぶ」(養賢堂)です。筆者である寺田氏は、元航空宇宙技術研究所(NAL)業務部長で、航空機構造破壊の専門家です。ボーイングの修理ミスが実際に破壊事故につながるかを、世界で最初に計算で明らかにした方です。事故調の委員の中には、この計算をできる人はいなかったそうです。

この本の中を注意深く詠むと、数箇所に分散して123便の事故について記述されています。この事故の破壊力学による解析結果を、最前線の研究者が明らかにしている、という点だけでも本書を読む価値があります。

何の知識のない人にとって「わかりやすい」かどうかというと、そうではありません。ただ、破壊力学の現状を実際の現場で、ごまかすことなく明らかにしているという点で「わかりやすい」と思います。

寺田氏は、この本に関する私からの質問に実に丁寧に答えていただきました。破壊力学をどのように勉強していくか、方向は分かってきました。

ただ、現状の破壊力学がき裂のある部材を、現場の技術者が実際の構造部材を前にして評価していくというところまで成熟はしていない、ということも明らかになりました。123便でのき裂の進展とその破壊に関する計算が、材料は航空機材料としてはよく使われるものであり、荷重条件としてもそう複雑でもないにもかかわらず、寺田氏クラスの研究者にしかできないという点に、破壊力学の現在があると思います。寺田氏のこの本の執筆意図は、このような現状に穴を開けたい、というところにあるのだと思います。

失敗から学び、再び繰り返さない、地道な男たちの奮闘のひとつがここにあります。

にほんブログ村 科学ブログへ←ブログランキングに参加しています。

|

« 超音波探傷入門 | トップページ | Tensegrity構造 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/23508/3030086

この記事へのトラックバック一覧です: JAL123便御巣鷹山墜落事故から21年:

« 超音波探傷入門 | トップページ | Tensegrity構造 »