パルテノン神殿は黄金比に基づいて建設されたのか?
”「自然の中の黄金比=神秘」説のルーツ”に北川成人氏からコメントをいただきました。氏の「7.モデュロール考」の中に「黄金比がなぜ美しいとされるか、数学的答え」がある、とのことです。
とても面白い。北川氏の「モデュロール考」で論じられている黄金比について、何回かに分けて書きます。
第1回目は、「パルテノン神殿で見つけられる黄金比」について。
「パルテノン神殿に黄金比」説は、自然界のオウムガイと同じくらい良く使われる例証です。しかし、黄金比になっていることを示すために引かれる線が恣意的である、という指摘もあります。こちらのページ。
それでも、1:1.6に近い長方形を見出せないこともありません。ただ、有効数字が3桁以上の正確さで黄金比になっている、ということではなさそうです。そうすると、人工の構造物ですから、建設する側に黄金比にする意図があったのか?が問題になります。もしあったとすれば、施工の精度の問題であり、パルテノン神殿は黄金比に基づいて建てられている、といえるのかもしれません。
北川氏の「モデュロール考」では、この点を否定しています。ギリシャ時代には比例が重視されたけれど、黄金比を使うようには奨励されていなかった。6と10という数字が特別の意味を持っていた。10は「完全・秩序・宇宙を表す」特別な数字、そして6は「自分自身を除く約数の和が元の数に等しくなる」という完全数のひとつ。この6と10との比がパルテノンに使われた、とのことです。6:10は1.666・・・で黄金比(1.618・・・)ではありません。
「細かいことを言うな、近い数値ではないか・・・」って?
いえいえこれは譲れません。現実にずれがあること以上に、6と10に特別な意味を持たせてその比を使っているとすれば、それはその比であって、黄金比ではないでしょう。
数が宇宙を支配するという数秘的な考え方で10と6とに神秘的な意味を持たせて、人体の中にその比を見出し、宇宙と人体が「入れ子構造」になっている、という独特な宇宙観にもとづいている、と説明されています。
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コメント
SUBALさん、こんにちは。
一昨年の12/30、銀婚式を記念して家内とアテネに遊びました。2005年のカウントダウンはアクロポリスの丘からアテネ市内の花火を見ることが出来ました。
現地のガイドのオバサンはパルテノン神殿と黄金比のことは話しませんでした。この神殿は昔トルコが要塞として使っていたため破壊が酷く、今でも改修工事が延々と続いています。
大理石の柱(のパーツ)は真ん中には四角い穴が空いていて、建設当初はここに鉛の角棒を入れて積み上げていました。20世紀初頭の補修では鉄の棒を使ったため錆が出て、現在進行中の工事では日本製のチタンの角棒が採用されたそうです。
投稿: 271828 | 2006年9月 7日 (木) 08時17分
271828さん
同年代でしょうか?うらやましいですね。
なるほど、大理石の柱には金属製の心棒があったのですか。
鉛は加工はしやすいけれど強度は小さい。鋼だとさびる。そこでチタニウムですか。
ジェットエンジンのファンブレードに使うチタニウム合金だと、比重は鋼の6割、強度は2倍。
日本製だとすると神戸製鋼製ですかね。
「現地のガイド…はパルテノン神殿と黄金比のことは話しませんでした。」という情報は貴重ですね。
投稿: SUBAL | 2006年9月 7日 (木) 23時32分
SUBALさん、こんにちは。
私は1949年2月生まれなのでほぼ同世代ですね。
現地のガイドは日本語の能力もそれなり、知識もそれなりでしたが、開口一番「黄金比」ではありませんでした。ギリシャの庶民が「黄金比」を誇りに思っているかどうか、アテネ在住の知り合いに聞いてみます。
> 日本製だとすると神戸製鋼製ですかね。
さすがに本職ですね。私たちはジェットエンジンの本物に触る機会なんてまずありません。
美術ファンならばアテネの考古学博物館は必見の価値があります。私は2回行きました。
大英博物館とかルーブル美術館は盗賊が戦利品を陳列しているのです。
投稿: 271828 | 2006年9月 8日 (金) 11時21分
271828さん 学年としては3年違いですね。
パルテノン神殿の柱の話は面白かったので、ブログの話題として書きました。ブログの広がりは楽しいですね。
アテネの考古学博物館、死ぬまでにいっぺんでいいから行ってみたいです。行けるかなぁ~。
投稿: SUBAL | 2006年9月 8日 (金) 21時33分