パイロットの訓練に飛行シミュレータを使うのはいまや必須です。エンジンが火災を起こし停止してしまった、油圧系統・電気系統が切断されてコントロールが効かなくなった、といった状況を実機で飛行中に起こして訓練するのは、大変な危険を伴います。各航空会社は、保有している機種ごとのシミュレータを持っています。
与えられた条件の下でクルーがとった処置がコンピュータで計算されて次々と結果を示して行き、瞬時の適切な判断と行動が取れるように訓練されます。
このときに、体感を伴うことによって、よりリアルな訓練ができます。したがってシミュレータのコックピットは、アクチュエータによって傾けられたり振動を加えられたりします。
今回、シミュレータのコックピットの中に入れていただき、羽田空港を飛び立って東京湾を飛行する体験をさせてもらいました。
滑走路でスラストレバーを引くと、グーンという加速感がありました。立っていた学生は「おう!」と思わずのけぞる。説明によると、このとき前を上げてう後ろを下げるように傾けているのだそうです。中に入っているとそのように傾いているとは感じられない。水平方向の加速感です。視覚による錯覚なのだそうです。
そのことをさらにはっきり分かったのは、ヘリコプターのシミュレータ。こちらはコックピットを動かすアクチュエータはありません。その代わり、全視界を覆うスクリーンがあるだけです。これで新宿の高層ビルの間を抜けて、東京都庁の屋上に着陸する体験をさせてもらいました。すごい迫力。終わったときはほとんど船酔い状態。人間の錯覚を利用した体感の実現も研究課題のひとつだということです。
1985年にJAL123便が御巣鷹山に墜落して420名の方が亡くなりました。このときジャンボ機は油圧系統が切断されて、コントロールが効かない状態でした。
この事故の4年後、1989年に米国オハイオ州でDC10が垂直尾翼にあったエンジンのファンディスクが破壊して吹っ飛び、やはり油圧系統が切断されてコントロール不能になるという事故がありました。(概要はこちら、同じサイトですがこのまとめはデタラメ、英文FAA事故報告書)このときは、近くの空港に着陸することができました。着陸後横転して火災になり犠牲者が出たものの、半数以上の乗客が助かりました。
JAL123便の事故の教訓が生かされて、パイロットが訓練されていた結果でした。ほとんどの人が生涯遭遇することがないであろう状況に備えて、パイロットたちは訓練されています。また、その訓練がより実効性があるように研究している人たちもいるのですね。
ちなみに、JALのシミュレータ部門には教え子がいます。私にSHADEの面白さを教えてくれたM君です。
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