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2007年1月27日 (土)

破壊力学とジェットエンジンの開発者

Sif1破壊力学を学ぶと、決まってはじめに出てくるのがグリフィスき裂です。き裂(crack 割れ)があると強度は下がります。また、き裂先端の応力集中係数は無限大に近くなります。応力集中係数が無限大ということは、強度が0になることを意味します。しかしき裂がある部材にも実際には強度があります。グリフィスは、この難問を表面エネルギーに着目してエネルギー解放率という観点で解明したことで現代破壊力学の元祖といわれる人です。

このグリフィスさん、英国のエンジン関係の研究所にいたことがある、という話は知っていました。しかし、いわゆる学者さんなのだろうな、と勝手に想像していました。グリフィスの理論は適用できる範囲が脆性材料に限られることから、関心が薄かったのです。しかし、むしろジェットエンジンの開発者としての仕事のほうが本業であったらしいことを、ひょんなきっかけから271828さんとのやり取りで知りました。ジェットエンジンの発明者として知られるフランク・ホイットルに影響を与え、彼自身も現代につながる先見性ではむしろホイットルよりも優れた業績を残している人なのですね。

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軸流コンプレッサーの開発は彼によるところが大きいようです。軍事機密の壁でエンジン開発に関するからの業績で公になっているものは少ないようですが、Rolls-Royce Avonの開発者としてその名が残っています。

このエンジン、コンプレッサーもタービンも軸流式、カン型の燃焼器、推力の大きさ、開発年代(第2次世界大戦直後)の共通性から、GEのJ47エンジンのライバルでしょう。

J47insoul GEのJ47エンジンは、IHIでライセンス生産されてF-86に搭載されたために、日本にも多く残っています。私の職場にも、ターボジェットエンジンの構造がよくわかるカットモデルとして展示してあります。

上の写真は韓国の航空大学校で撮影したJ47エンジンのカットモデルです。

J47左の写真は、J47エンジンのタービンディスクとシャフトです。

私が今関心を持っている破壊力学の勉強初期ジェットエンジンの勉強が結びつきそう。なんだかうれしいです。

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コメント

こんにちは。やはり破壊力学は航空関係の技術と深く関係しているのですね。以前、出入りしていた研究室では、けっこう航空宇宙関係の大企業に就職する学生がいました。ロボット関係は人気はありますけれど、就職先が不透明なので、就職先から考えると、まだまだ航空宇宙関係は根強い人気があると思います。

投稿: KADOTA | 2007年1月27日 (土) 21時16分

破壊靭性値も公表されているのは、ほとんど航空機材料ですね。破壊力学は工学としてフィールドで使うにしては、あまりにもあいまいだと感じていました。学者の研究題材から抜け出せていない。でも、グリフィスさんの問題意識は新しいエンジンを作るという実践的なところにあったらしいことがわかって、ちょっとうれしくなっています。
航空宇宙関係に就職していく学生たちに、実践的な問題意識を持たせるように、私も勉強していこうと思っています。
グリフィスさんは、当時の学者の間で行われていた材料の強度に関する瑣末な論議にうんざりしていた、という記事もあります。

投稿: SUBAL | 2007年1月27日 (土) 22時27分

一般機械なら「安全率」というある意味慣用的な応力評価を加味し、その蓄積が重量増加を引き起こして飛行性能に格段の影響を与える・・・という航空機の状況判断と機械工学理論との相違点が、破壊靭性値の公表の促進・CAEなどのシミュレーション研究、遅れ破壊などの研究、ストラクチャーストレイン(御巣鷹山事故のあれです)などの精査を促し、概念的に曖昧さを残してしまう「安全率」を導入することを快しとしなかったという側面があるんではないかと想像します。あくまで一面的な見方だと認識した上で。

投稿: デハボ1000 | 2007年1月27日 (土) 23時59分

航空機でも「安全率」は当然設定されます。ただ、一般機械では「安全率」の最低は3なのに対して、航空機では1.5であることが違います。
安全率で断面積に余裕を持たせるか、フェイルセーフの考え方で構造に冗長性を持たせるか、が採用されています。それでも完全には防ぎきれない疲労破壊にどう対処するか、そこに損傷許容設計(ダメトラ)が登場します。破壊力学と非破壊検査が損傷許容設計の根拠になります。
まぁ、一般の構造物に比べて安全率を小さく設定して、その分を頻繁な点検で補う発想の延長とはいえると思います。
通常ジェットエンジンの開発過程は公開されませんが、ネ-20については、公開されています。ディスクやブレードが何度もき裂から吹っ飛んでいますね。
グリフィスの向き合った現実にも共通するものがあると、想像しています。

投稿: SUBAL | 2007年1月28日 (日) 02時51分

SUBALさん、皆さん おはようございます。

破壊力学には全く門外漢の私がこの分野に関心を持ったのは職業柄「頭部障害基準値=HIC1000」を理解したかったからです。
http://www.playsafety.ne.jp/hic_fall_high.htm
定義式を見ると加速度aを時間で積分して速度が出ます。これを時間間隔(t2-t1)で割るのは「平均の加速度」を計算しているようですが、これを2.5乗して時間を掛ける意味が分かりません。どうやら「肥満指数」のように次元を無視して体重や身長の数値をいじる「目安」かな、と思ったりしました。

そこで昔読んだ材料科学の入門書『強さの秘密』(丸善)を紐解いたのです。著者はグリフィスの同僚から彼の問題意識や研究環境を詳しく聞き取っています。このあたり推理小説を読むようです。訳はややお粗末ですが、良い本ですねぇ。パルテノン神殿のアテナ像の話もありました。残念ながら日本人には書けないでしょうね。

グリフィスさんにも興味を持ったので、Wikipediaを検索したのですが、日本版は全く役に立ちません。英語版に行くとそこにAvonエンジンに関するリンクがありました。

投稿: 271828 | 2007年1月28日 (日) 09時00分

こんにちは。「強さの秘密」は私も読んだことがあります。材料力学と言えば、ティモシェンコですが、グリフィスさんもなかなかおもしろそうな方ですね。技術史のねたになりそうです。

投稿: KADOTA | 2007年1月28日 (日) 18時16分

>材料力学と言えば、ティモシェンコですが、グリフィスさんもなかなかおもしろそうな方ですね。

ティモシェンコは英文を大学のテキストとして使ってました。けどグリフィスというのもあるなら読んでみたい。今週末八重洲の本店に文献探し(掘り出しというという)を計画してますが探しておくか。

投稿: デハボ1000 | 2007年1月28日 (日) 19時16分

皆さん コメントありがとうございます。
損傷許容設計の考え方は、原子力発電所にも取り入れられつつあります。
非破壊検査技術者としても使えるようになるべきだと考えていますが、破壊力学の側にも使える道具としての整備が必要ではないか、というのが生意気かもしれませんが、昨年からの私の問題意識なのです。
あせらずゆっくり確実に勉強をしていきます。

投稿: SUBAL | 2007年1月29日 (月) 01時14分

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