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2007年1月31日 (水)

Wiiリモコンとシャルピー衝撃試験

昨日の記事で米国の第2次世界大戦時に企画製造されたリバティー船の脆性破壊について書きました。

ゆっくり荷重をかけて測定する強さ(Strength)だけでなく靭性(Toughness)を検討する必要性が強く意識された事故でした。強いだけではだめでタフじゃなければ・・・ということです。

Charpy_1 この靭性を評価する試験方法がシャルピー衝撃試験です。

ハンマーで試験片を叩いて破壊し、破壊時に吸収されたエネルギーをハンマーの持ち上げ角度と振り上がり角度の差から算出するものです。

このハンマーに3軸加速度センサーが搭載されているニンテンドーのWiiリモコンをつけて、Bluetoothを介してパソコン上にグラフ表示ができるようにして、試験をしてみました。その結果は続きで・・・その前に、

にほんブログ村 科学ブログへ ポチッ。昨日これまでの最高ポイントで1位になりました。いつもありがとうございます。

Charpy_impact_test 持ち上げ角度は144度です。無負荷では、ハンマーはほとんど144度に振りあがります。振り上がり角度が144度に近く振りあがるほど破壊時に吸収されたエネルギーが小さいことを意味して靭性が低いことになります。次の図は、ハンマーの柄に取り付けたWiiリモコンから得られた3軸加速度です。

Impact1一番上(①)は、試験片をいれずに無負荷でハンマーを振ったときの加速度のデーターです。赤色が主に遠心力です。緑色が、ハンマーの進行方向の加速度です。赤(Y)は正弦波ではないけれど連続的で規則的な変化をしています。

②はシャルピー吸収エネルギーが24(J、N・m)で、③は157(J、N・m)です。③の材料は高靭性です。

赤い線の一番高いところが、ハンマーが一番下に来たところ、すなわち試験片を叩くところです。

③では青のXを見ると、破壊後ハンマーが横方向に揺れているのがわかります。

また緑のZを見ると、試験片を破壊時に進行方向と逆の加速度を受けてその直後前方に加速度を受けているのがわかります。

緑のZはある程度予想通りでしたが、赤のYの位相のずれは、このデータを見て、へーそうなるのだという感想です。

Wiiリモコンに搭載されている3軸加速度センサの値を取得してパソコンに表示するソフトを作りました。こちらで公開しています。(2/24追記)

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コメント

こんにちは。すぐにこのようなことをしてしまう行動力がスゴイです。3軸の切削抵抗など昔はひずみゲージを貼り付けて測定などしていましたが、加速度センサーを取り付けるだけで測定できると便利ですね。シャルピーはもちろんうちにもありますので、やってみようと思います。(本来ならば、このようなセンサーはロボットでとっくに活用していなければいけないのですが。)

投稿: KADOTA | 2007年1月31日 (水) 16時07分

こんにちは。

>青のYを見ると、破壊後ハンマーが横方向に揺れているのがわかります
>緑のZを見ると、試験片を破壊時に進行方向と逆の加速度を受けてその直後前方に加速度を受けているのがわかります
>赤のYの位相のずれ

質問です。トンチンカンな質問かも知れませんが。

XYZとも,取り付けたリモコンの衝撃によるずれは考えなくていいのですね?

いつも同様の結果なんでしょうか。TPがもったいないけれど。

投稿: niwatadumi | 2007年1月31日 (水) 16時53分

SUBALさん 皆さん こんばんは

私はWiiリモコン座標系への変換で頭がこんぐらかっています。こんなグラフをCharpyさんが見たら喜ぶでしょうね。
http://en.wikipedia.org/wiki/Georges_Charpy
うっかり仏語版Wikipediaにはまりましたが、晩年は化学を教えていたのですねぇ。

投稿: 271828 | 2007年1月31日 (水) 17時53分

皆さん今晩は、コメントありがとうございます。

KADOTA さん
>すぐにこのようなことをしてしまう行動力
言い換えれば「オッチョコチョイ」ともいいますが、子供のころからで、もう生涯貫いてキャラクターにしようと思っています。KADOTAさんもご存知のところで強力な助っ人(?)も現れていますので、面白いことになりそうです。

niwatadumi さん
>取り付けたリモコンの衝撃によるずれは
たぶん、この精度の中ではほとんど影響はないと思います。
まだ再現性云々を問題にするような段階の実験ではありません。何ができるのか、どの程度の現象を捉えることができるのか、遊びながら探っているところです。赤(Y)の位相のずれわからないところもありますが、それ以外は合理的な説明はできそうですから、再現性はあると予想しています。

こういうものは、まずは現象を受け入れて、現象が現れる原因と過程の合理的な仮説を立ててみます。そのほうが楽しいです。ちゃんとした実験はそれから・・・。

271828 さん
>グラフをCharpyさんが見たら喜ぶでしょうね。
私もそう思います。Charpyさんが何を言うか聞いてみたいものです。Wiiリモコンで加速度が取れたら、一番にやってみたかったことです。もう少しちゃんとしたデータが取れるソフトができたら、まとまった実験をしてみたいです。

投稿: SUBAL | 2007年1月31日 (水) 22時49分

しばらく外出で見なかったら、シャルピー試験ですか。なつかしいです。
古参の研究者から昔、言われたことなのですが、「シャルピー試験による材料比較を強度に対して用いることは、定性的には説得力があるが定量的には説得力がない。従って試験機設計や耐圧容器の比較には使えないと思ったほうがいい。」

多分破断時の重錘の加速度変化が遷移的変動を起こすためいままで反対側への触れで評価する方法では近似的にしかできないからかな。Wiiのセンシングがこんなことに使えるというのは、従来型の加速度センサーに凝り固まった私にとっては眼を開かせる思いです。

投稿: デハボ1000 | 2007年2月 1日 (木) 01時58分

シャルピーってなんか可愛い響き(^∀^)

投稿: | 2007年2月 1日 (木) 15時07分

題名を見たら、リモコンをシャルピーで破壊したのかと思いました( ̄○ ̄;)
次はWii本体をシャルピーにかけてみてください!(嘘)
しかし、リモコンに対してここまでやるとはさすがだと思います^^
シャルピー試験機は衝撃を与えるだけじゃないんですね ドーン! グシャ! ムシャムシャ!(意味不明)
とにかく!頑張って下さい!(^O^)

投稿: 三 三┏( ^o^)┛オワタ | 2007年2月 1日 (木) 16時06分

無名 さん こんばんは
そうですね。シャルピーさんってフランス人らしくて、グリフィスさんやティモシェンコさんより洒落た響きですね。

三 三┏( ^o^)┛オワタ さんこんばんは
>とにかく!頑張って下さい!(^O^)
あんまり頑張ってはいないのですが、これからも楽しくやります。

デハボ1000 さん こんばんは

シャルピー衝撃試験は、原理的にはきわめてシンプルですから結果として出てくる吸収エネルギーや衝撃値に連続性がないということはないと思います。
ただ、この試験結果からたとえば板厚を決めるという使い方はできませんね。またシャルピー衝撃試験は、鋼の「延性-脆性遷移温度」を知るのによく使われます。その値を考慮した設計をしているからこそ流氷観測船「ガリンコ号」はオホーツクの海に沈没しないのだ、と私は理解しています。
まさか、定量的に評価できるからといって応力拡大係数と破壊靭性値で靭性を評価して設計をしているとは思えません。
でも、今回のグラフに出てきたハンマーの横振動は、高靭性材料のシャルピー衝撃値に過大評価の影響を与えているかもしれない、という仮説は成り立つような気がします。

投稿: SUBAL | 2007年2月 1日 (木) 21時18分

>またシャルピー衝撃試験は、鋼の「延性-脆性遷移温度」を知るのによく使われます。

そうですね。
多分いった人は、圧力容器関係の認証検討項目に使われていないから言ったのだと記憶します。エンジニアリング部門では使用温度(例:LNG用タンク用)などで材料指定しますし、単に私が見えてないだけだったのかもしれません。

投稿: デハボ1000 | 2007年2月 2日 (金) 04時32分

デハボ1000 さん
>使用温度(例:LNG用タンク用)などで材料指定します
材料指定というかたちで設計に絡んでくるのですね。
その材料の品質管理の過程で試験項目のひとつとしてシャルピー衝撃試験も実施されている。かつて、茨城県鹿島にある製鉄所で品質管理を勉強させてもらったときに、毎日ひたすら衝撃試験を行っている部署を見せてもらいました。フルに生きている試験方法なのだと実感しました。
通常機能や機構を考える設計者は、材料は品質管理をされてばらつきのないもの、接合部は母材以上の強度があるもの、を前提にしていると思うのです。
ブリッジコンテストでは、上記の前提が成り立たないケースについて思い知らされます。つまようじで250キロの記録が出ていますが、材料強度の線にはまだという感じです。(この辺はグリフィスさんの想いに近いのかと、勝手に想像しています)
非破壊検査技術は、そうはいかない現実に対応している技術であるともいえます。

オーッ!わたしが気まぐれでやっていることって案外つながっているのかも・・・。でもつなげないほうが良いかな?

投稿: SUBAL | 2007年2月 3日 (土) 09時21分

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