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2007年3月31日 (土)

超音波を浴びせることで物体は破壊できるのか?

昨日、「コンピュータが思いがけず描く絵」に彪霧さんから次のようなコメントをいただきました。

コメント****************

はじめまして。
超音波を浴びせることで物体は破壊できるのか?
と思い、「超音波」で検索してここに辿り着きました。
「超音波で物体を破壊する」――世のアニメ・マンガ・特撮モノに多く存在する現象であり、その原理は「物質の固有振動数と同じ周波数の超音波を浴びせることにより対象を破壊する」と説明されます。
が、そんなことは可能なのでしょうか?
そんなことが起こるなら、現実世界でも既に(兵器として)実用化されていそうなものです…。
ド素人の私の手には負えなくなってきたので詳しい方のご意見を頂きたいと思い、書き込みました。SUBALさんはどう思われますか?

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以下、私なりに考えたことです。

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私は最近のアニメや漫画などはよく知りませんが、「超音波で物体を破壊する」で検索をかけてみると、結構出てきますね。「超」がつくからすごいだろう、というイメージでしょう。

まず、「超音波」の定義ですが、「人間の耳に聞こえないほど周波数の高い音波」としておきます。

「物質の固有振動数と同じ周波数の超音波を浴びせることにより対象を破壊する」というのは共振をさせて破壊するということですね。

当たり前ですが、超音波で共振をさせるには浴びせる超音波の周波数に近い固有振動数を持ったものがターゲットになります。ギターの弦を想像してください、細い弦ほど短い弦ほどピント張った弦ほど固有振動数は高いのです。固有振動数の高い弦からは高い音が出ます。超音波は、人間の耳には聞こえないほど高い音です。超音波が共振させることのできるとすれば、細くて短くてピンと張ったものなのです。(壊れたとして、映像的に迫力はいかがでしょう)

私たちが普段聞いている音はの波の長さ(波長)数メートルから数十センチメートルといった範囲です。そこで、空気は伸びたり縮んだりして波を伝えていますが、その変化は間近で聞くジェットエンジンの騒音(120dB とてつもなくでかい音)でも、体積変化にすると1万分の2程度なのです。日常の話し声では桁違いに体積変化は小さいのです。超音波は、体積変化の時間当たりの回数は早くなりますが、同じエネルギーならば体積変化の量はどんどん小さくなります。超音波は高いエネルギーを、ものをほとんど変形させること無く伝えることができるという特徴があります。

ものが壊れる壊れないは、どれほど変形させるかにかかってきますから、超音波はものを壊しにくい波動だということになります。ものを壊すのには、高いエネルギーの低周波音のほうが可能性があります。エネルギーの高い低周波振動が地震であるともいえます。

振動から共振を起こして、破壊するのということは疲労破壊を起こすということですが、パソコンや携帯電話に入っている水晶が埋め込まれている発振部が疲労で壊れた話は少なくとも私の周りでは起きていません。その前に、ノートパソコンのふたのヒンジや冷却ファンや電源が疲労破壊しています(おい!SONYあなたですよ)。

それと、意外かもしれませんが、空気は音を伝えにくい媒質です。水や金属のほうがよく音を伝える。また、音の弱まり方は、周波数が高いほど大きくなりますから、超音波にとっては不利です。伝わる音の強さは、周波数の二乗に逆比例します。空気中を数十メートル超音波を飛ばして、対象物を壊すとしたら、どんな装置が必要なんだい、おいおいそれじゃ絶対に無理だよ(ですね前田建設ファンタジー営業部さん)、という世界です。

ただ、現在人体の患部に超音波を当てて患部だけを壊す研究が急ピッチで進められていて、一部実用化されています。

これは、キャビテーションという現象を使います。炭酸飲料のふたを開けると泡が出ますね。圧力がかかった状態では、気体が液体の中に溶け込みやすくなっています。圧力を下げてやると溶け込んでいた気体が泡となって出てきます。超音波も圧力の変動を伝えていますから、液体中を強力な超音波や1点に焦点を当てるような超音波にして伝搬させると、圧力の下がったところでキャビテーションがおきます。超音波では、1秒間に数万回以上のサイクルで発生してつぶされるを繰り返します。繰り返しの中で、成長した泡が急激につぶされるときに衝撃波が出ます。この衝撃波で患部を破壊しようというわけです。めがね等の超音波洗浄技術の延長です。このキャビテーションは液体中でしかおきません。

古いSFで「ミクロの決死圏」というのがありました。人間と潜水艦が小さくなってからだの中に入っていく、というやつです。人体を切り刻むことなく、周囲を損傷することなく患部を治療する、そんな想いがあのSFにはあったように記憶しています。

超音波による「破壊」は、その特性からそんなSF物語の夢のような「破壊」が可能なのです。周囲に影響を与えることなく、ガン細胞や胆石を狙い撃ちする・・・。

端折った説明になっていますが、現在執筆中の「超音波」に関する本を読んでいただけると、すっきりわかってもらえると思います。(コマーシャルに余念の無いSUBALでした。笑い)

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コメント

SUBALさん おはよう

大変興味深く読ませていただきました。多くのアニメでは光や音を流体のイメージで表現してしまいます。これが多くの誤解を招いているのですが、この意味でヤマトの「波動砲」やドラゴンボールの「カメハメ波」の罪は重いといえます。
しかし、現象を実体化して捉えるのは人間の認識にとって必然的なことのようです。私のブログでも取り上げたいテーマです。

さて「指数・対数」ネタも開始しました。タービンブレードのネクタイピンを持っていないので「これはどうだ!」という代物です。

投稿: 271828 | 2007年4月 1日 (日) 06時07分

大容量の「超音波」が作れない現状ではキャビテーションがわかりやすいかも。
ところで、
>その前に、ノートパソコンのふたのヒンジや冷却ファンや電源が疲労破壊しています(おい!SONYあなたですよ)。
私の知人の話ですが、ウォークマンの機構部品が壊れたのでSONYのサービスセンターで直接修理してもらった。のに1月でまた破損。疲労のよう。怒り狂ったかれは、サービスセンターへ。
男「このまえ頼んだのが又壊れたぞ。お前のところは機構設計をまともにしているのか」
サ「すみません。確かにこれ設計の問題みたいですね。新品交換とさせてもらいます」
男「だいたい天下のSONYがこんなことでは。」
サ「いや、うち電子部品に関しては追従を許さないと思ってますが、メカの設計が甘くてね・・あら機械工学なさってるんですか(連絡先を研究室にしてあった)なんだったら、弊社に応募されませんか?」
男「・・・・・・(呆然)・・・」

投稿: デハボ1000 | 2007年4月 1日 (日) 07時42分

271828 さん おはようございます。
この記事は、数式と絵図を使わずに「超音波による破壊」をどこまでわかりやすく説明できるか、「つづり方レッスン」のつもりで書きました。
そろばんは生き残って計算尺は滅びている、若いころの予想とは違っています。
計算尺をただ「解」を求める道具とすれば、電卓やPCに負けるのでしょう。そろばんが暗算ツールとして有効性を保っていることをヒントにすれば、計算尺は対数指数の世界のビジュアルでダイナミックな理解を手と目で実現するツールとして存在意義があるように思えますが、いかがでしょう。

デハボ1000 さん
SONYの話を書き始めるととまらなくなります。同じようなやり取りを東京のサービスセンターとしています。(ただし転職の誘いはありませんでした。笑)
20年前に三菱のギャランΣに乗っていて不具合が続出して困りました。周囲に聞いてみると同様でした。明らかに品質管理が悪い。現在のSONYはそのときの三菱自動車の状況に似ているような気がします。
でもVisual Basicはおしまいだなと思いながら、まだ使い続けている私は、性懲りも無くSONYを買い続けているのです。SONYさん、そろそろ気づいてよ。バーブ佐竹という人の歌の一節にこんなのがありました。
“どうせ私をだますなら、だまし続けてほしかった・・・”

投稿: SUBAL | 2007年4月 1日 (日) 11時41分

こんにちは、彪霧です。

>SUBALさん

大変丁寧な返答をいたただき、感謝しております。
超音波で検索したときに「非破壊検査」が出てきたときから、この結果は大体予想していました。
遠くに届かないことや、物体を破壊するのにはエネルギー不足ということも検索結果を巡るうちに大体のところは掴んでいました。
しかし詳しい方に言われると、また…。
SFにはよくある事ですけどね!この程度ではめげませんよ!
それと、過去に書かれた「超音波の定義について」も興味深かったです。存外あいまいなものなのですね。業種の違いからくる使用用途の違いのため、ということかもしれませんが「聞くことを前提としない音」というのを最初に見たときは驚きました。その後の真相究明もあわせて参考になりました。

>271828さん
>ヤマトの「波動砲」やドラゴンボールの「カメハメ波」の罪は重い

もっともな意見ですが、一応そういったものが好きな人間として「ファンタジーやSFというものは在りえないことを描くものである」と言わせていただきます。ワープができる、と言われていればできるのです。それが解明できないのは現在の地球の科学がそのレベルに達していないからです。
そういう前提のエンターテインメントなんです。
波動砲は「タキオン」を使ったものとされていたはずですし、カメハメ波は「気」です。どちらも光や音と捉えていいのか判断がつくものではないと思います。
また、上のほうで超音波の定義について触れましたが、私に「超音波による物質の破壊」について調べようと思わせたモノは「スーパーサウンド~」と名付けられています。超音波を英訳するとウルトラサウンドまたはウルトラソニックウェーブとなる、と「超音波の定義について」に書かれています。
なるほど、超音波だけを使っているわけではないのか!といったことも考えられます。そこがSFの(一種の)おもしろさでもあります。

投稿: 彪霧 | 2007年4月 1日 (日) 13時50分

彪霧 さん こんばんは
つたないブログを丁寧に読んでいただきありがとうございます。
科学や技術をやっている人は、時には野暮なことをいうこといわざるを得ないことがあります。
ファンタジーは荒唐無稽が良いですね。時には余計な専門知識が楽しみを奪うこともあります。
ただ、いまロボットに取り組んでいる人の多くが鉄腕アトムで育った人であるように、機構を考えネジを締める行為を突き動かすものがファンタジーだったりすることはあるようです。
では、わたしの場合は・・・???。あんまり美しくないなぁ。まあ、起こりうる未来の危険の芽を、人も目には見えないうちに、音も無く光も無く検出して取り除く、闇の仕置き人「梅安」のイメージかもしれません。
スーパーソニックは音速を超える超音速の意味です。スーパーサウンドはこれを指すという明確なものはありません。SFのネーミングには良いかもしれませんね。

投稿: SUBAL | 2007年4月 2日 (月) 20時25分

SUBALさん、彪霧 さん こんばんは

私は団塊の世代なので、鉄腕アトムは雑誌「少年」で読み、白黒TVでその放映を見て育ちました。子供を持ってからは、冬休みはゴジラ、そして春休みのドラえもんを楽しみにしていたのです。ですからファンタジーを毛嫌いしているわけではありません。
SFではレムの「ソラリス」などが好きですが、スターウォーズは中世の騎士物語にしか見えません。

前のコメントで「現象を実体化して捉える」と簡単に書きましたが、やや説明不足でしたね。この典型は「熱素」です。熱を技術的に利用しようすると、これを定量的扱う必要が出てきます。温度は物体にどれ位熱素が含まれているか、密度のように取り扱うことが出来るのです。しかし困ったことに熱素には重さがありません。

ご存知かと思いますが、ドーキンスさんに『虹の解体』という著作があります。
http://cse.niaes.affrc.go.jp/minaka/files/rainbow.html
科学にはファンタジーの持つ荒唐無稽さはありませんが十分に詩的であり、それ自体が美しいのです。

投稿: 271828 | 2007年4月 4日 (水) 19時03分

こんばんは。
突然のコメント、失礼します。

内容から察するに、非破壊検査・材料力学でお世話になった、オニの頭突きを持つ教官とお見受けいたします。
10年ほど前の千歳校で、第1回つまようじブリッジコンテスト優勝作品に携わった者です。
在学中は大変お世話になりました。

おかげさまで卒業後は希望の職種に就くことが出来、ロケットや飛行機の製造・整備に関わってきました。
しかしその後、思うところあって えいやっと転職。
現在は、陶器・ガラスの製造販売をしております。

前置きが長くなりましたが、『超音波による物体の破壊』ということでしたので、なにか関係があるやも知れぬ と現在の仕事で経験した話をひとつ…。

陶器やガラスを自分たちの手で制作して、全国の小売店へ出荷するのですが
検品の過程で、がたつき・ぐらつきがあるものは『底すり』をして安定させます。
大きな砥石(ギャートルズに出てくる石のお金のような)がモータで廻っているところに水をたらして擦っていくのです。

このときにたまに甲高い音がすることがあって、そのまま擦り続けると商品が割れることがあります(特にワイングラスの脚などガラス器の細くくびれた部分)。
可聴音域なので超音波とは違うと思いますが、ガラスの固有振動数と共振することによる破壊だと思われます。
ワイングラスの脚の長さや、砥石に当てる角度などで音の出方が違うので いつも気を遣います。

投稿: りべっとまん | 2007年4月 5日 (木) 01時47分

りべっとまん さん こんばんは
以前BBSにもコメントしてくれたよね。
元気そうで何より。
これは面白い事例かもね。
共振による破壊の可能性もありだけれど、
音の発生自体が摩擦による抵抗によって、曲げかねじりの応力が繰り返されていることによる破壊の可能性があるのではないだろうか。
音がしないほうが実は振幅が小さい。摩擦抵抗が大きくなって振幅が大きくなって音として聞こえてくる。勝手な想像で的が外れてるかも知れないけれどね。
陶芸の技法にある、「飛びカンナ」をイメージしているのだが・・・。

投稿: SUBAL | 2007年4月 5日 (木) 02時56分

>SUBALさん

りべっとまんさんへのレスの中によく分からない箇所があったのですが、

砥石で擦っている時に発生する甲高い音は曲げかねじりの応力が繰り返されることによって発生していて、また、その曲げやねじりの応力の繰り返しによってグラスの脚が割れるのではないか

ということでよろしいでしょうか?
陶芸も科学もよく分からなくて、すみません。
よろしくお願いします。

投稿: 彪霧 | 2007年4月 5日 (木) 12時07分

彪霧 さん こんばんは
確かにまどろっこしい言い方になっていますね。
言われていると通りです。共振以外に、直接振動させている結果ということも考えられませんか、ということでした。

投稿: SUBAL | 2007年4月 5日 (木) 19時31分

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