エキスポランド事故 車軸のかたち
車軸の形は、どんなのだろう、それによって探傷試験を適用する際の問題点が浮かび上がります。
あまり情報はないのですが、こちらの記事に掲載されている写真を元にCGで再現して見ました。よくわからないところは、想像で補っています。
車軸はボルト状になっており、両端をキャッスルナットで締めるようになっています。キャッスルナットは、振動によってナットが緩むのを防止するために、西洋のお城の塔のような切込みが入っていて、コッターピンで止めるようになっています。(ゆるみ止め対策もねじのことならこちらの本を参照)
今回破断したのは、内側のねじを切ってある部分の端のようです。断面急変部、本体との取り合いはよくわかりませんが、最大曲げモーメントになるところの応力集中、典型的に疲労破壊が起こりそうな場所です。
このCGで探傷検査におけるいくつかの問題が浮かび上がってきました。
超音波で探傷する場合は、コッターピンを通す穴が妨害エコーの発生源になります。それが両端にあります。実際の穴のサイズにもよりますが、これは厳しい。両端というのが痛いです。
さらに、外側(上の図では右)から探傷しようとすると、今回破断した部分の手前にある段差、これが微妙です。反射元の距離が違うので関係なさそうですが、細長い部品を探傷するときに問題になる「遅れエコー」(モード変換で横波が発生するために見られる現象)の立ち上がりと重なりそうです。見つけたい伝搬距離のところに遅れエコーが重なる可能性がある。(0.76nDの距離から外れていれば良いのだけれど・・・)
磁粉探傷をする場合でも、断面急変部の隅には形状による漏洩磁束が出てきます。
浸透探傷では、ねじがどこまで切ってあるかによりますが、通常のカラーチェックではなくて水型エアゾールを使う方法のほうが間違いが少ないかもしれません。
いずれにせよ、半端な知識でやると大きな間違いを犯しそうな形です。有資格者(JISによる非破壊検査技術者資格認証制度があります)が探傷するのは当たり前ですが、この車軸自体をどのような方法で試験検査するか、レベル3以上の技術者によって検討されなければなりません。ハンドマグナを使う方法やカラーチェックが簡単そうに見えるからといって、素人がやるのはとても危険です。
この車軸の場合、材料選択の間違いはなさそうですし、振動対策もしてあります。しかし、点検検査をいかにするかの視点は車軸形状を決める際には考慮されているとは思えません。
こうした、破損すると影響の大きい部品には、検査設計の考え方が必要です。
そのためには、設計技術者も材料力学・構造力学・破壊力学だけでなく非破壊検査工学も教養として身につけておく必要がある、こうした事故が起きるたびに思うことです。
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コメント
こんばんは。この件について僕のブログでも取り上げましたが,やっぱりきちんと作られたCGは説得力が違いますね(CGのみならず,ですけど)。
投稿: niwatadumi | 2007年5月12日 (土) 23時46分
niwatadumi さん こんばんは
ブログ読みました。う~ん、デジタル機のズーム機能を利用すれば、遅れエコーと重なっても検出可能、という見解はどう考えてもいただけません。幾らズームしたって、パルス幅は変わりありません。ビーム路程数ミリの範囲で重なれば、明瞭に区別するのは難しくなります。ただし、相当割れが伸展していれば、遅れエコーだけでは説明できないエコー高さになりますから、わかるでしょう。
私は、遅れエコーということがありますよ、0.76nDの位置から段差をはずす設計をすべきだよ、といいたいのです。(検査を考慮した設計をすべきということです)
前のコメントで、「簡単だといいましょう」と呼びかけましたからね。でも、実際の車軸のかたちを見たら、工夫が必要で、設計時からの考慮があれば「簡単になるのに」ということはいっておきたいです。
投稿: SUBAL | 2007年5月13日 (日) 00時37分
こんばんは。
元社員としてはこの事故について非常に興味を持っています。色々情報を探してこちらのブログを見つけました。
折れた軸の取り合いですがストレート部分がボギー台車部分に圧接にて挿入されていてテーパー部分にボギーアーム(車輪部)がテーパーベアリングで挿入されて外側でナットで締め付けている。私はこちら側のネジ部が折れたと思っています。真偽の程は分かりませんが…。
ちょっと一言でした。
投稿: 元トーゴ社員 | 2007年5月13日 (日) 03時59分
あまり内容的には不適切な気がします
現実はニュースで直ぐに再現CGがあるように
作らざるを得ないですけれど
投稿: w | 2007年5月13日 (日) 05時21分
おはようございます。
元トーゴ社員 さん
貴重なコメントありがとうございます。
テーパーベアリングだろうとは予想していました。
外側のねじ部に疲労割れが発生した、あるいは折れたという事例が過去あったということでしょうか?それとも応力のかかり具合からの推測なのですか?
内側のねじ部で折れたというのは、報道の中に唯一あったイラストの情報によりました。これが正しいという根拠はありません。
どこで折れたか、これも大切な情報ですね。このどちらかかによって、原因も責任も点検を含めた対策も違ってくるでしょう。それ抜きの「悪者探し」にはウンザリしています。
もし何かわかりましたら、教えてください。
w さん
何が不適切とお考えですか?CGを作ることですか?作ったCGが現実と違うということですか?それを基にした、私の意見ですか?お考えを聞かせてください。
私は、ただの興味や関心だけでこの問題を取り上げてはいません。(いつものブログの記事とはスタンスを変えています)
投稿: SUBAL | 2007年5月13日 (日) 08時18分
SUBALさん おはよう
引用されている記事の写真で、点検作業をされている方の右手の下に見えるのが問題の部品ですね。ハンドホールから赤く塗ったボルトの頭が見えます。点検のし易い造りではありませんね。
新聞の報道では、2時間半前に乗った女性客がいつもより振動が大きかった、と証言をしています。事故直後の感想なので割り引いて考える必要があるかもしれませんが、その前兆はあったかも知れません。
私の本業から言えることですが、コースを設計した段階でどこの加速度が大きいかは分かっているはずです。これらの場所に異常振動を捉えるセンサーがあったら、と思います。
投稿: 271828 | 2007年5月13日 (日) 10時43分
271828 さん こんばんは
ハインリッヒの法則からいっても、重大事故が単独でいきなり起きることは考えにくいわけです。
不具合の時点で適切な判断と対処がされるか否かにかかっているのでしょう。
兆しをつかむのは、有効なセンサーと経験に裏打ちされた知識だと思うのですが・・・。
投稿: SUBAL | 2007年5月13日 (日) 18時10分
こんにちは。事故はもちろん起きてはいけないのですが、完全にゼロにはできるはずはありません。そのたびに、技術的な説明なしに犯人捜しのような報道には辟易します。
理科教育の方々がサイエンスの基礎を広めるためにいろいろ頑張っていますが、技術教育の方でもテクノロジーの基礎を広めるために行動していかなければと改めて思いました。
投稿: KADOTA | 2007年5月13日 (日) 20時49分
こんばんは。
>明瞭に区別するのは難しくなります
そのとおりです。けれどエコー形状や幅の違いなどの微妙な違いをとらえることで欠陥を検出する検査技術者が多数います(同じ品物を毎日延々と検査する方に多いようです)。
>ズーム機能を利用すれば、遅れエコーと重なっても検出可能、という見解
は誤解です。
今回のケースは超音波探傷の適用がすでに困難な様子ですが,破断側端面からアプローチできれば軸の直径を考慮(=遅れエコーの重畳)しても割れを検出できるだろうというのが僕の「経験的直感」です。勿論,簡単ではないでしょう。
最後に,
>設計時からの考慮があれば「簡単になるのに」
モノを長く使うにはどうしたらいいか,という気持ちがメーカーにまだまだ萌芽していないということでしょうか。プラント等ではそのための検査が見直されてきているのに。
投稿: niwatadumi | 2007年5月13日 (日) 21時17分
KADOTA さん
KADOTAさんのブログで書かれていることも含めて同感です。残念な事故ではあるけれど、だからこそ科学や技術が力を発揮すべきときだとも思います。「悪者」を見つけてそれを叩くことで溜飲を下げる風潮には抗したい。小さな声だけれど、声を上げています。
niwatadumi さん
確かに同じものを同じ探傷器を使ってやっていると、微妙な違いを見分けるワザができてくるというのは事実でしょうね。ただ、探触子による違いはさておくとしても、現状メーカーや機種によって波形の整流の仕方やフィルターが違いますから、Aスコープで観察できる波形の様子も様々です。方法として一般化するのは難しいかもしれません。でもそれができれば、それこそ「技術」ですね。
元トーゴ社員 さん
やはり今回破断したのは、私のCGでいって左側、内側のねじ部のようですね。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070508it15.htm
圧接されていたとすると、なぜ内側のねじ部で破断したのでしょう。何かまだ知られていない違う要因があるのではないでしょうか。
圧接されていたとすると、年1回のメンテナンス時に車軸は抜けない、ということでしょうか。そうだとすると、磁粉探傷や浸透探傷も実施が難しくなります。
投稿: SUBAL | 2007年5月13日 (日) 22時49分
http://dehabo1000.cocolog-nifty.com/holder/2007/05/post_1cba.html
に参考としてこのBLOGをリンクしました。ご参考まで。(事後にて申し訳ありません)
さて、皆さんの記載を見ても、どうも設計の問題があるようですね。確かに量産設計をしない部品だとメンテナンスの必要性を考えずにすることはありえます。出来ないなら逆に交換周期を提示する必要があります。
----たとえばこういうことを提言するマスコミが少ないことが、KADOTAさんと同じく、リテラシー低下の一因かも。とすると私たちもそれを意図して情報発信をしなければならないですね。
投稿: デハボ1000 | 2007年5月15日 (火) 07時56分
デハボ1000 さん
リンクありがとうございました。
たとえば1988年に起きたアロハ航空機の事故、検査員と整備員の怠慢・技量不足をあげつらえば、それはその通りなのだけれど、損傷破壊の観点からはマルチサイトダメージの実例として、またヒューマンファクターの事例として知見が導き出され、語り継がれています。
この事故が日本で起きていれば、どのような扱いになっていただろうかと、思います。
投稿: SUBAL | 2007年5月16日 (水) 00時45分
SUBALさん、こんばんわ。
圧接と言う表現より圧入と言ったほうが分かりやすいかったですね。
リンクの記事を読みました。
これは憶測ですが内側で折れたとすると原因は軸の交換を今まで行なわなかったのでコッターピンの入る場所がいつも同じナットの場所であった為に軸にゆるみが発生し破断の原因になったのではないでしょうか?
でも、これだと外側のナットが逝ってしまうのですが…矛盾です。
分解した時に毎回ナットを交換していたのか、気になるところです。
折れた軸の外側のナットの締め付けはトルクが決まっておらず、閉めすぎると動きが鈍くなるので組み立てる職人の長年のカンが必要です。
トーゴがまだ遊園地に営業所があったころはメンテナンスは十分すぎるくらいに行なっていました。
>圧接されていたとすると、なぜ内側のねじ部で破>断したのでしょう。何かまだ知られていない違う>要因があるのではないでしょうか。
メンテナンスで工場に入っていたコースターのオーバーホールは何回か見ていますが抜けないことはありません。ギヤ抜きなどで外していました。
>圧接されていたとすると、年1回のメンテナンス
>時に車軸は抜けない、ということでしょうか。
取り留めない意見になってしまいました。
長文、失礼。
投稿: 元トーゴ社員 | 2007年5月16日 (水) 00時56分
元トーゴ社員 さん
圧入であればわかります。圧接は拡散接合になりますから、溶接をしたと同様になります。
で、圧入したのはユニット(の本体側の板)へではありませんか?本体との関係ではナットで締められていた?そのあたりが見えてこないのですが、違いますでしょうか。そうだとすると、内側のねじ部のつけ根での疲労割れの発生は必然性が出てきます。そのナットが緩みがちであればなおのこと。
>折れた軸の外側のナットの締め付けはトルクが決まっておらず、閉めすぎると動きが鈍くなるので組み立てる職人の長年のカンが必要です。
これ、もしかしたらものすごく重要なポイントかもしれないという気がしてきました。
「閉めすぎると動きが鈍くなる」これは走行に直接影響するということですね。しかし緩いとがたが生じて疲労破壊の原因となる、締め付けトルクの指定はない。この状況で、熟練不足な作業者が組立作業をしたときに、締め過ぎの方向・緩すぎの方向、どちらの方向に傾くだろうか、と考えると自ずと明らかなような気がします。
外側のナットを締め付ける感覚と同じ感覚で内側のナットも締めていた。(もちろん想像です)そうすれば・・・。
コッターピンは折れるなどして外れない限り、ナットは回りませんが、緩く締めたところでコッターピンを付ければ、当然緩んだままですね。
それにしても、本体との取り合いの図面が見たいです。ネット上にいくつかそれらしきものがありますが、どう見てもおかしなところがあって信用できません。ポンチ絵でもメールで送ってもらえませんか?情報源の保護はお約束します。CGで再現してみたいです。
投稿: SUBAL | 2007年5月16日 (水) 01時23分
おはようございます。ネットが飛んでたなんて!
いままで、皆さんが考えていたことは、「なんで分からないようにメンテナンス体系や機構設計を構築してしまったのかな」という見方が、おおきかったですよね、事故のバスタブカーブを考えればこれはまあ当然です。
ただ、機械を設計すると言うところであそこまで凝ったつくりにしている(しかも接合まで)となるならば、もしかしたら「鉄の繰り返し疲労強度が10^8CYCLE以上で落ちない」いわゆるSN曲線の議論を援用したという可能性が、ミスを招いた理由だと言えるかもという事が言えるのですね。そこに削りだし材にほとんどない内部亀裂が混ざっていた・・・としたら
というストーリーを考えられます。またメンテナンスのあとのネジの締め込みトルクが強すぎると亀裂が更に延びやすくなるパラメータになるのですよね。
機械設計をやって回転体の設計をやってると、たまーに遠因として考える検討の「甘さ」。ただこの破損理由をかんがえて設計することは、案外思いつかない可能性があります。
いずれは、自分のところでもUPすることですが、検査・品質管理の目とは違って、設計者の知識や理論構築がこのマシン(普通の搬送マシンと違って乗りごごちの悪さが売り物)と違うのだよ。という視点も持っておいて「複眼的」に見てみる必要があります。(逆に安易に書けない怖さがあります。まして犯人をつるし上げて終わりという土壌では)
今回は「設計者の資質が。しかしそれは既存のハンドブックベースの構想では読めたかな」という事故調タイプの話ですが、裏を取って書いて見たいです。逆に拙速は禁物と言うくらいで。(参考:金属の疲労強度/中沢・本間:養賢堂S62 P29~)
投稿: デハボ1000 | 2007年5月16日 (水) 06時23分
ごめんなさい。
SUBALさんと元社員さんがおっしゃっていたことと、当方が言いたいことが実はかなり同じでした。読み落としご容赦を。特に
>>折れた軸の外側のナットの締め付けはトルクが決まっておらず、閉めすぎると動きが鈍くなるので組み立てる職人の長年のカンが必要です。
>これ、もしかしたらものすごく重要なポイントかもしれないという気がしてきました。
「閉めすぎると動きが鈍くなる」これは走行に直接影響するということですね。しかし緩いとがたが生じて疲労破壊の原因となる、締め付けトルクの指定はない。この状況で、熟練不足な作業者が組立作業をしたときに、締め過ぎの方向・緩すぎの方向、どちらの方向に傾くだろうか、と考えると自ずと明らかなような気がします。
この理由だとSN曲線に締め付けによる常時の疲労を加味した修正疲労強度(前の書なら「疲労限度線図」を算出しなおす追従設計「も」必要と言うことです。10^7CYCLEに設計者達が陥りやすいドツボが見えてきたかも。ただこれはまだ仮定要素一杯ということは、宣言しておきます。
妄言多謝。
投稿: デハボ1000 | 2007年5月16日 (水) 06時38分
デハボ1000 さん
SN曲線から疲労限の考え方で設計しているのはおそらくそうでしょう。
私が着目しているのは、本体との取りあいです。元トーゴ社員の方もエキスポランドの方も外側のねじ部が危ないと考えていました。エキスポランドの当初の会見写真は、今から考えると、いろいろなことを示唆している気がします。多分、外側のコッターピンが外れるなどの不具合が多くあったのでしょう。
内側のねじ部には意識がいきにくい構造なのだろうと思います。
それが、締め付けの問題と、おそらくは圧入部の取り外しの繰り返しで(ガフガフになる)で、片もち梁状態になったとしたら、断面急変部の応力集中で(アールをどの程度とっていた?)SNカーブでの検討は、吹っ飛んでしまう・・・・そんな予想を現時点でしています。
投稿: SUBAL | 2007年5月16日 (水) 07時17分