2007年4月14日 (土)

対数螺旋を調べるソフトウエア

オウムガイやアンモナイトそれに巻貝の巻き方は、対数螺旋になっています。

本日は、三角形の比例(相似三角形)を使うと、対数螺旋の性質が調べられます、というお話です。

対数螺旋になっていれば、その次の成長が現在の大きさに比例しているはずです。利子に利子がつく複利の借金のように増えていくのです。(複利: 元利合計=元金 x(1 + 利率)の n 乗)グラフでのイメージはこちら

その性質を利用して、対数螺旋の性質を調べるソフトウエアが「Spiral」です。

「Spiral」で対数螺旋を調べる仕組みを説明します。

ソフトを起動したら、対数螺旋になっていると思われるものの写真を取り込みます。今回は「ダ・ヴィンチ・コード」で取り上げられていたオウムガイです。

Spiral螺旋の中心と、中心から水平に線を引いて螺旋とぶつかる点と、そこから30度回転した線と螺旋とがぶつかる点の3点を結ぶ三角形を描きます。

最初の線分の長さと、30度回転した線分の長さの比で、中心角30度の三角形を描きます。画面左に、基本となる三角形の形と、2つの線分の比が表示されます。

この三角形をその比で30度回転しながら、を次々描いていきます。最初は写真のオウムガイの螺旋とずれますが、最初の線分の長さと比を調整して、写真の螺旋に合うようにします。このオウムガイでは、その比は1.093です。

このようにすると、調べようとする螺旋が対数螺旋になっているかどうかがわかります。さらに、その性質を調べるには・・・。

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2007年4月 8日 (日)

黄金比発見器

Golden1  黄金比って面白いな、と思っていたころ考えて作った「黄金比発見尺(スライダー)」です。

Grdet_1 街に出て、これぞと思う縦横比があったらこれをかざしてみると、1対1.6に近いか否かがすぐわかる、というものです。

Golden81 透明シートに縦横比が黄金比になる長方形を何個も描いたものをかざしたほうが早いような気もしますが、少しメカニカルなものを作りたかったのです。

Golden5 説明文章を作って「学研」に送ったのですが、何の反応もありませんでした。啓林館にしとけばよかったかな?

本日は没ネタででした。

   

   

   

                                        

  

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2007年4月 6日 (金)

消えた「自然の中の黄金比」

久しぶりに「オウムガイ 黄金比」で検索をすると、オウムガイの中に黄金比があるとするページがほとんど見られなくなりました。

Oumg 4年前に、「オウムガイに黄金比?」を公開したときには、ネット上でも本やTV番組でも、あたかも既定の事実であるかのように「自然の中の黄金比」の例証として流布されていました。

中学や高校の数学の教科書に「黄金比」が取り上げられて、大きなオウムガイの写真が掲載されていました。

Kerinnkan 中学3年になった息子の数学の教科書を見ました。啓林館の「楽しさ広がる数学3」です。黄金比の項目がありますが、「黄金比を見つけよう」と例示されているのはカードとジュースカンです。「パルテノン神殿」「ミロのヴィーナス」の写真を含めても、すべて「人工物」です。へー、見事に・・・

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2006年9月20日 (水)

パルテノンと黄金比

パルテノン神殿の話題、黄金比から柱のジョイントに日本製のチタンを使ったを経てアルキメデスのクレーンまで、漂流してきました。私としては、ひとつひとつの話題もさることながら、ブログの面白さを知りました。

北川成人さんのHPを読んで、それについて書いたら、御本人からコメントをいただいてびっくりしました。秋山仁氏や夢枕獏氏等についてもHPに書いていますが、もしかしたら御本人が読んでくれているのかもしれません。私は、批判的に取り上げている方も実名を挙るのは、たいていの場合どこかですごいなと思っている方です。

また、271828 さんが入ってきて、3人でこのブログを通じて見解を交換しました。3人とも団塊の世代、それぞれ生活基盤も考え方も持っている知識領域も違っているのに、「黄金比」という共通の関心事で盛り上がることができました。違っているからこそ、面白いのでしょう。違うのに同時代の空気を吸い、同じように人生を楽しもうとしている。ブログやWEBの世界以外では知り合えなかったと思います。

パルテノン神殿の話題は、とりあえず小休止として、また時間を置いて書いていこうと思います。

一応の締めくくりとして、北川成人さんから私信でいただいたパルテノン神殿と黄金比についてのコメントを、御本人の承諾をいただきましたので、掲載します。

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黄金比は美と理系(数理)が結びついていて同時に二つが楽しめる。そこに黄金比の人気があるのでしょう。

パルテノンは神の像を安置する建物であり、儀式も外で行われ、人が入ることのない建造物です。外からどう見えるか(美しく感じるか)、それを考えて設計されています。

一種の彫刻なのです。美しく見せたい、それがギリシャ人の願いです。
そのため基壇は中央でふくらみ、柱はわずかなふくらみを持ったエンタシスであり、両端の柱はわずかに内側に傾けててあります。“微調整”させているのです。

いかに美しく見えるかに使った寸法は黄金比ではないということだけは強調しておきたいと思います。ギリシャ人が使ったのは柱のベースの直径(モルドゥス)です。その直径は人間の足の大きさからかんがえられています。その何倍を柱の高さにする等で全体の寸法が出ています。部分と全体の調和、比例それを求めていました。

http://trucsmaths.free.fr/nombre_d_or.htm
フランス語の黄金比のページです。途中に人間の腕が出てきます。中世の聖堂を建てるときに使ったものさし=人間尺(指、掌、二の腕等)が出ています。あくまで人間のからだを基本に寸法を採っています。それが西洋の建築です。ギリシャのオーダー(柱)を勉強するのが建築であり、それはついこの間まで(19世紀末)行われていたのです。黄金比は出てきません。
ギリシャ語でキリストはIHCOVCと綴る。これを数字であらわすと888、それで88ピェ8プス(28.5m)が標準的なヴォールトの高さとなりました。

こんなふうに建築では人間尺度が基本なのです。そこに黄金比が入り込んでくるのは19世紀後半からです。
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2006年9月 3日 (日)

19世紀中葉からの黄金比フェティシズム

北川成人氏の「モデュロール考」を読んで分かることは、ユークリッドの外中比を「黄金比」として、自然界をも支配する特別の神秘の比、として「発見」したのは19世紀以降のツァイジング、ハンビッジ、ギガといった人たちであるということです。

「発見」というところが面白いです。それも、まずは、人体の中に「発見」をしていったとのこと。宇宙と人間とが相似形であり、黄金比という特別の比によって「入れ子」の関係になっていることを「発見」したということのようです。北川氏が示している文献を読んでいるわけではありませんが、どう考えても怪しいと思います。

* φ=(√5+1)/2=1.618・・・のどこまでが一致したら「黄金比」であるとしたのでしょうか?(判定の許容範囲)

* 年齢・性別・民族・・・どこまで調べたのでしょうか?(サンプル調査の範囲)

多分、こんなことを問うほうが野暮なのでしょう。私は、子どものころ夏祭りにやってくる占い師が、お客の個人的な事情(たとえは子どもが3人、最近身内に不幸があった・・・等々)を「当てる」のが不思議で不思議で、何時間も観察したことがあります。そうするといくつかの仕掛けが分かってきて、面白かったのを憶えています。その仕掛けのひとつが「当たってほしい」という心理に付け込んで、範囲の広いことを言って誘導する、という手法でした。

「黄金比」が人体にもあってほしい、という願望の投影で、1.6でも1.5でも1.4でも「近い」という判定をしているのではないでしょうか。

それとも、理想の美しい人体では「黄金比」になるとでも言うのでしょうか。

このブログと関連サイトで何度も言ってきていますが、自然の中に黄金比があるというのはデマです。

北川氏はコルビュジエの研究をされているとのことです。黄金比フェッチになっているコルビュジエの錯誤を緻密に浮き彫りにされています。

ただ、その北川氏も19世紀以降の「黄金比の発見」自体には、それを是としているようです。「黄金比の呪縛」の煙の中におられませんか?といいたいのです。

小説「ダ・ヴィンチ・コード」の中の「黄金比」に関する叙述は、とんでもなくあほらしいと思っていました。今回北川氏の「モデュロール考」を読んで、この叙述には西欧の根深い思想あるいは哲学の背景を持っていそうだということが、よく分かりました。

北川氏のこの言葉は、まさにそういうことなのだろうだと思います。

「一宗教の経典を聖書と呼んでこの上なく重要な書物と勘違いしてしまうように、黄金という言葉がつくことによって、外中比が最高の比であるかのような錯覚を深めていく、黄金比フェティシズムといってよい状況が、19世紀中葉から20世紀の20~30年代初頭にかけて、あった」

数学者やデザイナーが、「神秘の比」などということを自ら根拠を示すことなく「・・・といわれている」と主張する場合、この黄金比フェティシズムに、自覚的にか無自覚かは別にして、影響されているということでしょう。特に数学の先生には、この黄金比フェティシズムを検証してみてほしいです。北川氏の論文をぜひまず読むことをお勧めします。

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2006年8月31日 (木)

黄金比がなぜ美しいとされるか、数学的答え

北川成人氏の「モデュロール考」について、その2.

「黄金比がなぜ美しいとされるか、数学的答え」が「モデュロール考」の中にあると、北川氏はいいます。

黄金比が美しいとされるのは「入れ子構造」になっているからだとのことです。北川氏によると、「入れ子構造」とは具体的には、黄金比(x=(√5+1)/2)が連分数で表せることと、縦横が黄金比でできた長方形は、相似の長方形を次々と内に作っていく相似性を持っている、ことを指しています。

う~ん、これが黄金比が美しいとされる数学的答え、そういわれても私にはよく分かりません。

Gsec 言われているのは、右の図のことでしょう。確かに黄金矩形を黄金比で分割していくと、相似の四角形が内側に現れてきます。相似形が内包されているから「入れ子」になっているとは言えそうです。だけれど、どうして「だから美しい」のでしょうか?

相似形を連続的に内包する図形は、何も黄金比でなくても描くことは可能です。

Renまた、x=1.618・・・にならない連分数もあります。

北川氏の言葉を良く読むと、「黄金比が美しいことの数学的答え」とは言っていません。「美しいとされる」となっています。なるほど、人体が宇宙に内包されている相似形である、と感じるときに「美」を感じるのだとすれば、上のような図形や、連分数の形に「美」を見出す、ということなのでしょう。「美」は思い込みによっても感じられる、ということも北川氏の叙述には含まれるのでしょうか。

私は、黄金比を美しいとは感じませんが、絵や風景や音楽などを美しいと思うことはあります。何故「美しい」と感じるのか、知りたいと思っています。ずーっと考えていますが、よく分かりません。ただ、なんとなく自らの命の儚さを意識することがベースになっていそうだという気がしています。やがて儚く滅びる我が命と、共鳴する何か、その対極にある永遠や力強さを示す何か、を見たり聴いたりするときに、「美しい」と感じるような気がします。

黄金比を信奉する人が、人体(自分)と宇宙が同じかたち(相似形)で内包関係にある(入れ子構造?)と思い込むことで「美」を意識した、という解釈ならば、理解できないわけではありません。

でも、それは、黄金比でなくても「相似形」つまり単なる比、で良いことになるのです。

私が、黄金比に関するウソにこだわっているのは、黄金比でなくても比そのものが興味深く面白いのではありませんか、ということを言いたいためなのです。

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2006年8月29日 (火)

パルテノン神殿は黄金比に基づいて建設されたのか?

”「自然の中の黄金比=神秘」説のルーツ”に北川成人氏からコメントをいただきました。氏の「7.モデュロール考」の中に「黄金比がなぜ美しいとされるか、数学的答え」がある、とのことです。

とても面白い。北川氏の「モデュロール考」で論じられている黄金比について、何回かに分けて書きます。

第1回目は、「パルテノン神殿で見つけられる黄金比」について。

「パルテノン神殿に黄金比」説は、自然界のオウムガイと同じくらい良く使われる例証です。しかし、黄金比になっていることを示すために引かれる線が恣意的である、という指摘もあります。こちらのページ

それでも、1:1.6に近い長方形を見出せないこともありません。ただ、有効数字が3桁以上の正確さで黄金比になっている、ということではなさそうです。そうすると、人工の構造物ですから、建設する側に黄金比にする意図があったのか?が問題になります。もしあったとすれば、施工の精度の問題であり、パルテノン神殿は黄金比に基づいて建てられている、といえるのかもしれません。

北川氏の「モデュロール考」では、この点を否定しています。ギリシャ時代には比例が重視されたけれど、黄金比を使うようには奨励されていなかった。6と10という数字が特別の意味を持っていた。10は「完全・秩序・宇宙を表す」特別な数字、そして6は「自分自身を除く約数の和が元の数に等しくなる」という完全数のひとつ。この6と10との比がパルテノンに使われた、とのことです。6:10は1.666・・・で黄金比(1.618・・・)ではありません。

「細かいことを言うな、近い数値ではないか・・・」って?

いえいえこれは譲れません。現実にずれがあること以上に、6と10に特別な意味を持たせてその比を使っているとすれば、それはその比であって、黄金比ではないでしょう。

数が宇宙を支配するという数秘的な考え方で10と6とに神秘的な意味を持たせて、人体の中にその比を見出し、宇宙と人体が「入れ子構造」になっている、という独特な宇宙観にもとづいている、と説明されています。

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2006年8月 7日 (月)

「自然の中の黄金比=神秘」説のルーツ

この黄金比は,人間がつくり出したのではなく,自然界にも多く存在し,科学的な理屈だけでは証明できない神秘的なものである。」といった見解があることを以前に紹介しました。ほんと?ではどこにあるの・・・と疑いの目を向けると、とたんに怪しくなります。実際に調べたものはほとんどない。単なるうわさの類のようにみえます。今日は、黄金比=神秘説のルーツについて。

「ダ・ヴィンチ・コード」に記述がある(角川書店 上のPP128-133)のはよく知られています。世界的なベストセラーの中で、ハーバード大学での授業場面として言われています。また、「著名な数学者」である秋山仁氏がテレビ番組で言っています。

有名大学の先生たちも、いっています。

例えば、慶応大学の脇田玲 氏の「デザイン言語基礎論」(黄金比:自然の美しさ )。講義がビデオで公開されています。この方は、「自然の中の黄金比」については実証はせずに写真を見せて「黄金比は自然の中にある。だから人間はそれを美しいと感じる」と展開しています。自然の中にある黄金比以外の比とは区別されて、なぜ黄金比が美しいと感じるのか、という点については触れていません。

もうひとつの例。北海道大学大学院理学研究科教授新井朝雄氏の「数学と自然と芸術」。この中に、こんな記述があります。

「黄金比は自然界では、特に、生物界と関連して現れています。たとえば、植物の葉序(葉の つき方)、巻き貝の螺旋形態、鹿、魚、人間の形態において黄金比あるいはその近似的出現(フィボナッチ数列)が見られます。 こうした事実と芸術が精神と魂の生命の発露を伴ってい ることを考慮するならば、高次の生命の理念と黄金比が何らかの関係があるようにおもわれます。私にはこれはたいへん興味深い照応のように感じられます。」

この方も実際に調べもせずに、「高次の生命の理念」なるものにに結び付けています。この方「極方程式の定数」を知らないわけでもないでしょう。『「かえるは動物である」また「ウサギは動物である」したがって「かえるはウサギである」』というのは間違いである、ということも知らないはずがない。

これだけの人が言っているのだから、「・・・といわれている」といっちゃってもいいかという気分になります。

でも違う、といい続けてきました。最近理解してくれる人も現れてきました。「黄金比じゃなくても自然は成長する」。

前置きが長くなりましたが、黄金比=神秘説のルーツを探していましたら、「といわれている」といった噂話の類ではなく、文献を紹介しているページを見つけました。大成建設の北川成人氏のページです。このHPにある「黄金比伝説」。

北川氏によると、黄金比という言葉が使われ始めたのは19世紀に入ってから。ドイツの美学者ツァイズィングが「人体比例新論」(1854)を著し黄金比とともに人体の神秘性.を鼓吹した、といいます。

それ以前では、ルネサンス期に「神聖比例論」(1498)や「建築書」(1509)でルカ・パチリオが、「正五角形は完全無欠の宇宙や美の象徴」と考え、円に内接して五角形をなすウイトリウィウス的人体について記しており、レオナルド・ダ・ヴィンチらによって描かれた、ということです。

さらにそのルーツは、「宇宙は数の神秘に支配されて調和をと保っている」としたピタゴラス学派(正五角形を学派の象徴として紋章にした)までさかのぼれます。正五角形には1.618・・・の比はあります。しかし、ピタゴラス学派が自然の中に黄金比がある、といったわけでも、黄金比が「美」の根拠といったわけでもありません。

以上を図式的にまとめると・・・

数の神秘→宇宙の調和 ピタゴラス学派(ギリシャ時代 紀元前)

五角形→宇宙や美の象徴→ウイトリウィウス ルカ・パチリオ(ルネサンス期)

黄金比→人体の神秘性 ツァイズィング(19世紀) 

ツァイズィングやそれを引き継いだというジェイ・ハンビッジらが、どのような実例で「黄金比を発見」したのかは分かりません。きちんとしたものならどうしてそれがデータとして語り継がれないのか、不思議です。1:1.3や1.5になるものを「黄金比」などと数学者たちが言うのでしょうか。

Manツァイズィングが「人体比例新論」を書いた19世紀半ば、というのは自然科学が発達し産業革命が進行し、そのほころびが出ていたころです。1858年にはダーウィンの進化論が発表されます。

ところで、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたウイトリウィウスでは、へそが円の中心になっています。「へそまでの高さ」対「身長」はおおよそ1対1.6(1:1.642)になっていますが、他はそうなっていません。(「ダ・ヴィンチ・コード展」)また、手先・足先が円と接する点では、五角形ではありますが、正五角形にはなっていません。

私は、数学の先生たちが、あいまいな印象から事象を解釈していて、見逃してはいけないズレに無頓着になっているようにみえます。

そもそもおおよそ1:1.6になっている例をたとえいくつか示すことができたとしても、だから「神秘」とか「高次の理念」だとかにどう論理的に結びつくのかも、何の説明もありません。「はじめに答えありき」としか見えません。

ま、自分の体をどう見ても「黄金比」などにはなっていない、オジサンのへそ曲がりなたわごとでした。

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2006年5月 7日 (日)

黄金比 調べること

 オウムガイの螺旋に黄金比があるというのは「ガセ」であることを書いて(「自然の中の黄金比」)から1年間たちました。久しぶりに「黄金比 オウムガイ」や「黄金比 自然」で検索すると、少なくなっていましたね。数学のページでも微妙に書き換えてありました。先生たち読んでくれたのかな?

ただ、「ダ・ヴィンチ・コード」の記述を鵜呑みにして「不思議だ」とか「神秘だ」とか書いているページはたくさんあるようです。

調べてみれば良いのですが、調べて違っていてもまだ信じたい人たちもいるようです。「自分の体が標準ではない」とか「厳密に計ればそうなるのかもしれない」とか自分の調査の結果を否定してあくまでも信じようとするのは、私から見ると不思議な感覚です。出てきた事実にこだわり、そこから自分の頭で考えるのが、科学とか技術の原点でしょう。

中学生が黄金比について調べたレポートが公開されていました。茨城県阿見町朝日中学の女子生徒2名のレポート「黄金比は美しい?」です。調査も面白いし19枚ものレポートをまとめる力もなかなかのものです。

調査の中で、黄金比の長方形を含む6種類の長方形を示して、「美しいものを選んで」というアンケートをとっています。3年生女子を除く、1年生から3年生の男子も女子も22~29%の間になったそうです。3年生女子は、38%。さらに先生に同じアンケートをとると、63%になったそうです。

17%が1/6ですが、黄金矩形の配置は、配置によって選ばれやすい位置にあるので、20%代前半は、それが意味があって選ばれたとはいえないでしょう。面白いのは「黄金比は美しいはず」という予見があると思われる「3年女子(調査者の所属する集団)」と先生では、黄金矩形の選択率は高いということです。

そこからの彼女たちの評価は、「やはり先生方は、中学生より歳を重ねているだけあり形を見る目が違う」というものでした。黄金比の四角形に美しさを見出さなかった集団を「未熟」と切り捨てています。どうしてだろう。子どもの目のほうが正直なのではないのかな?

少なくても彼女たちの調査が明らかにしたことは、「黄金比の四角形が美しい」と感じる感覚は、経験や年齢とは無関係に自然にかつ普遍的に人間に備わっているものではない、という事実なのです。

また、彼女らは、身近なものにある黄金比を調べていっています。比が約1.6になるものをたくさん挙げていますが、ほとんどが人工物。自然のものは、教科書に載っていたという「蝶々」ひとつだけでした。彼女らの調査のきっかけとなった先生の言葉の中に「自然の中にもある」となっていたのに、なぜ自然物はリストアップされていないのでしょう。

私は想像しています。調べたけれどなかったのだろうと。だとすると、中学生君にあえて言いたい。「ないというデータも貴重なデータですよ」「あなたたちの調査データを素直に読むともっと面白いことが分かってきそうですよ」

先生にも言いたい。調べもせずに「黄金比は自然の中にもある不思議な比」というような非科学的な嘘は謹んでほしいものです。また、生徒の調査に予断を排して向き合ってほしいです。

裸の王様は黄金の服など着てはいないのです。

先生のいうこと、エライ人がいうことを、「必ず正しいはず」と鵜呑みにしないこと。本当かどうか調べること。予想したものと違った結果が出たら、前提にしたことから見直すこと。そこにあたしい発見がある。がんばれ中学生。

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追記

この黄金比は,人間がつくり出したのではなく,自然界にも多く存在し,科学的な理屈だけでは証明できない神秘的なものである。」と書いてある中学数学の指導案(このページの「少人数指導事例」と「指導案黄金比」)もあるのです。数学の先生、調べもせずに簡単に科学を投げ捨てて「神秘」を語らないでください。先生の思考方法の非科学性を表現するものでしかありません。しっかりしてください。頼みますよ。

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2006年5月 4日 (木)

ダ・ヴィンチ・コード オウムガイ 黄金比

「ダ・ヴィンチ・コード」が映画になって近日公開されるようですね。私も、小説は最後まで読みました。この調子だと、映画も見に行ってしまうのかな?

DaDa Vinci Code Special Illustrated Edition」を購入しました。これは、いいですね。装丁も豪華だし、写真も綺麗。章の区切り方も洒落ている。私が購入したときは3000円を切っていました(今日は3555円)。英語の勉強にでもなるか、と思って買いましたが、見るだけでもおだやかな気分になります。

休日の昼下がり、ロッキングチェアーに揺られながら、のんびりページをめくる・・・・そんなときの本に良いかもしれません。(ロッキングチェアーものんびりした休日もないのが悲しい)

Ngr 以前にも書きましたが、オウムガイにある螺旋に黄金比はあるか、という話題。

Special Illustrated Editionには、オウムガイの殻の断面写真が掲載されています。私がこれまで見てきた断面写真の中では、色合いも切断の仕方もとても綺麗なものです。早速、螺旋を調べるソフト「Spiral」で調べてみました(赤い線)。対数螺旋の定数bは80.4(度)でした。やはり黄金比とは関係がなく、これまで調べたオウムガイの対数螺旋の範囲内です。図の中で黄色い線の螺旋は、黄金矩形に沿う螺旋です。明らかに違いますね。

Da Vinci Code Special Illustrated Edition」 に掲載されているオウムガイの写真は、The National Alliance of State Science and Mathematics Coalitions (NASSMC)という米国政府が絡んでいると思われるサイトに掲載されている写真を水平方向に反転したものです。

そしてその解説には、こう書いてあります。

Nautilus Shell - This tropical sea-shell is an example of a logarithmic spiral that expresses the golden rectangle which is a rectangle in which the ratio of the length to the width is the Golden Ratio (a number approximately equal to 1.6180339887498948482).

早とちりしそうな微妙な文章ですね。オウムガイの殻は対数螺旋の一例であり、対数螺旋は黄金矩形をexpressする、というわけです。

情報のリテラシーという観点から「自然の中の黄金比」を見ていくと面白いかもしれません。

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