日本テレビ系列の「未来創造堂」で、胎児の超音波診断装置「エコー」の開発物語をやっていました。
悪い予感が当たりました。技術の開発物語を取り上げるのに、何が問題であったのかについての「うそ」はすべてを台無しにします。
振動子から発せられる超音波の反射波(エコー)を、横軸(時間経過)と縦軸(音圧)として波形表示させる「Aスコープ」から、人体の内部が直感的にわかる断面画像を得ることが、はじめてこのとき行われたかのようなストーリーになっています。しかし、超音波による人体の断面画像を得る装置は、1954年にアメリカのJ・ワイルドが開発に成功しています。ワイルドは15MHzを使っていたため、減衰が大きく表層部しかか見えないものでした。
1950年には、現在も使われている5MHzの周波数で、和賀井らが超音波断面画像が得られる装置を作っています。(事前の研究はこちらに少し書いています。)
以前にも書きましたが、和賀井たちがなぜ5MHzだったかというと、和賀井の友人が石川島造船にいて、その協力を得て鋼の溶接部を探傷する装置を使って研究をしていたからでした。(偶然の妙)
この物語は、1962年から65年にかけての話です。和賀井はこの物語の主人公竹内と同じ順天堂大学ですし、装置を開発したのは現在のアロカ(株)ですから、このアイデアは明らかに既知だったのです。
胎児診断には、羊水中に浮かぶ胎児から得られる超音波信号が単純ではなかったところに難しさがあったはずです。音速が変化するところで直進せずに屈折して曲がることや、音響インピーダンスが大きく変わらないことから境界からのエコーが小さい、といった点です。竹内久彌と重山貞夫らは、超音波を胎児診断に適用するというアイデアの元に、その困難を解決して、現在普通に行われる胎児の超音波診断につながる礎を築いたのです。
開発者に対する敬意は、その人が解決した課題そのものを想起することが出発点だと思うのです。
すごそうに見せる(番組制作者が描いたストーリーの)ために、先人の業績までその人にあるように描くのは、私は失礼だと思います。
私は、マスコミのこのような安直な「科学技術」に対するかかわりを、「ニセ科学」より以上に腹立たしく思います。担当した制作者は取材をしたのだから、知らないはずがないのです。
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