2007年8月 5日 (日)

水晶振動子の超音波探触子

ドイツにある某超音波探傷の研究所に勤めている友人(知人かな?)から、水晶を振動子として使っている超音波探触子が送られてきました。

Quartz_transduce 水晶は、キューリー兄弟が発見した圧電材料で、超音波の利用技術の始まりとなったランジュバンも水晶を使ってランジュバン型振動子を作りました。

でも現在では、超音波探傷に使う振動子材料はほとんど100%といっていいくらいPZT(ジルコンチタン酸鉛)です。

もう、かれこれ四半世紀この技術に携わっていますが、水晶振動子の探触子を見たことはありますが、仕事で使ったことはありません。

水晶を使った探触子には、試験体の金属を電極として使うためのスプリングが出ています。おそらく試験体上でこすることに耐える電極を貼り付けることが難しかったのでしょう。

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2007年8月 1日 (水)

ブログ記事を本にして保存

5月に起きたエキスポランドジェットコースター事故について、いくつかの記事を書きました。そして多くの方から、貴重なコメントをいただき、私も間違いや勘違いをしながら、考えを進めてきました。

現在までのところ原因究明には至っておらず完結していませんが、ブログ記事という遷ろいやすいところに放置しておくのはもったいないな、と考えていました。記事を印刷して閉じて保存しようかと考えていたところ、日本ブログ村のページでブログ出版局というのが目に付いて、値段もそう高くなさそうなので、試しにやってみました。

Blogbook0 本日届きました。新書版のサイズです。本の紙も印刷も悪くないですね。製本もしっかりしている。

Blogbookindex これが目次です。ちょうど100ページの本になりました。

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2007年7月25日 (水)

超音波ビーム ソフトウエア 更新

超音波ビーム形状を理解するソフトウエアを更新しました。

Ultrasonic_beam_1 今回の更新のメインは、ビーム中心軸上の音圧を表すグラフについて、精度を上げて、少なくとも近距離音場限界距離(X)の一つ前の谷の部分では音圧がゼロになるようにしました。

振動子直径や周波数を変更すると、指向角と近距離音場を表す線と連動してビーム中心軸上の音圧を表すグラフが、アニメーションのように連続的に変化します。

自分で言うのもなんですが、これはいける。

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2007年7月21日 (土)

超音波による霧とトルネード

一昨日、愛知県豊橋市にある本多電子株式会社を訪問してきました。

Hondadenshi 本多電子さんは、超音波技術に関して幅広い開発を行っており、本社内に「超音波科学館」を設置しています。

予想どおり面白かったですね。超音波を体感できるようになっています。愛地球博用に作ったものは、子供でも超音波を楽しめるようになっています。

実験研究としては成功したが製品には至っていないという技術も展示してあって、面白かったです。(最後にアンケートを書くのだけれど、『超音波をこんなものに使えそうというアイデアはありますか?』という質問項目がありました。ここにこの企業の超音波技術に対するスタンスが見えて、いいなぁと思いました。)

ここで勉強した内容は、執筆中の本に反映するとして、今日は超音波による霧化について紹介します。

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2007年7月 6日 (金)

支笏の森で波の干渉

お客さんを送って支笏湖まで行ってきました。近場ですが、北海道の湖の中で好きなほうです。

Yamasen 支笏湖に流れ込む川から山線鉄橋(昔イギリスの技術で石狩川に架けられたダブルワーレントラスを移転再現されたもの)越しに支笏湖と恵庭岳が見えています。

Mori こちらは樽前山方向、川の上流を見ています。

きれいな水面を見ていたら、急に重ね合わせの原理を説明する波の干渉写真を撮れるかも知れないと思い立ちました。

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2007年7月 4日 (水)

牛肉を超音波で判定

牛肉の質を超音波で判定するという記事がこちらのサイトで紹介されています。こちらのブログで紹介されていて知りました。

生体の中で超音波は、透過・反射・屈折の挙動をします。反射と透過は、音響インピーダンスに影響されます。音響インピーダンスは、音を伝える物質の音速と密度の積です。

Pig 音響インピーダンスの差が大きいほど反射しやすくなり、小さいほど透過しやすくなります。

左は、「超音波便覧」(丸善)に掲載されていた、豚の肝臓・脂肪のの割合と音速の関係です。このようなデーターの蓄積は進んでいるようです。

Jing 生体の音速は水の音速に近く、組織によって微妙に異なります。映像に映っていたのは人体に使うアレイ探触子に良く似たものでした。そうすごい技術とは思えませんでした。傍らにあったダイヤル式チャンネルが付いたテレビに目が行ってしまいました。(写真は何の関係もありませんが、正しいジンギスカンなべの始まり方です)

昨日のNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」 では、外科医幕内雅敏氏の肝臓がんの手術の様子を放映していました。

それにしても、人間の肝臓の中から100個近い悪性腫瘍を切り出す手術はすごかったです。

術前も術中も超音波で悪性腫瘍を確認していました。開腹して、肝臓に直接超音波プローブを当てていました。きれいな断面映像が映っていました。ガン組織とそうでないものをどのように区別をしているのでしょうか。

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2007年7月 1日 (日)

ステルス爆撃機と蛾

この前の記事で、蛾のかたちが超音波による探査から身を隠すものではないか、と書ききました。

それってステルスということですよね。勘のよい方からコメントが寄せられました。

  蛾を観察していると、たとえばススメガの仲間はステルス爆撃機のB-2によく似ていると思うのです。

St5色情報を取り去ってモノクロにしてみました。どうでしょう。

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2007年6月30日 (土)

蝶と蛾 かたちのココロ

超音波に関する書籍を執筆しています。年末発刊を目標にしています。

その中で動物の超音波も取り上げていますが、定番はコウモリとイルカでしょう。どちらも調べれば調べるほど面白いです。捕食関係にあるコウモリと蛾の超音波をめぐる攻防については、書籍のほうに書いておきました。今日は、そこからはみ出してしまった蛾のかたちについて。

蛾と蝶は、夜行性と昼行性、触角の形、色の派手さ、胴の太さなど区別が容易だと思っていたら、どれも決め手はなく鱗翅目(りんしもく)の中の科の違いでしかないということのようです。

Ga 例外があるとはいえ、夜行動する蛾が多くそれらは羽を広げて休み、昼行動する蝶は羽を立てて休むことが多いのは間違いないでしょう。

超音波探傷をやっている目で見ると、蝶の止まり方は超音波を当てると「コーナーでの2回反射」で、発信源に超音波が帰って来やすいかたちに見えます。

それに対して蛾の止まり方は、反射源として考えると捕らえるのが難しいなぁ、と思うのです。

Moth2 蝶と蛾のかたちをCGで作ってみました。超手抜きですが、前2つが蛾、左のが蝶のつもりです。

これを反射の視点ででみると、どうなるでしょう。CGで試してみました。

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2007年5月12日 (土)

エキスポランド事故 車軸のかたち

車軸の形は、どんなのだろう、それによって探傷試験を適用する際の問題点が浮かび上がります。

あまり情報はないのですが、こちらの記事に掲載されている写真を元にCGで再現して見ました。よくわからないところは、想像で補っています。

Expoimageshaft 車軸はボルト状になっており、両端をキャッスルナットで締めるようになっています。キャッスルナットは、振動によってナットが緩むのを防止するために、西洋のお城の塔のような切込みが入っていて、コッターピンで止めるようになっています。(ゆるみ止め対策もねじのことならこちらの本を参照)

今回破断したのは、内側のねじを切ってある部分の端のようです。断面急変部、本体との取り合いはよくわかりませんが、最大曲げモーメントになるところの応力集中、典型的に疲労破壊が起こりそうな場所です。

このCGで探傷検査におけるいくつかの問題が浮かび上がってきました。

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2007年5月10日 (木)

エキスポランド事故と金属疲労

エキスポランドの事故について、疲労破面の様子が明らかになりつつあります。

「折れたのはナットが付いた車軸のいちばん端の部分で、軸の方向に対し垂直に真っ二つに切れたように折れていました。警察が折れた部分の断面に光を当てるなどして調べたところ、断面の4分の3ほどに波状のしま模様が残されていることがわかりました。これは、力が繰り返し加わることで徐々に亀裂が広がる金属疲労に特徴的なもので、警察は、金属疲労が起きて車軸が折れたと断定しました。また、断面の残る4分の1ほどには表面に凹凸がみられるということです。」(NHKニュース

Fati上記の引用の最後の部分が重要です。最終破面率25%ということです。前回の記事で予想したうち高靭性材料の高サイクル疲労、と考えられます。(注:左の写真は、今回の事故の車軸のものではありません。疲労破面の参考例です。)

とすれば、次のことが言えます。

          

(1)解体して点検すれば、注意深く見ると目視でも確認できた時期があるはずです。(エキスポランドの行った目視とは、解体もせずに外側から眺めただけ?)

(2)非破壊検査をしていれば、JISに定められた3つの方法のどれを適用しても、ごく早いうちに間違いなく発見できています。(これを見つけられない非破壊検査なんて存在意義がない、とまで言い切れます)

(3)疲労亀裂はこの車軸だけであることは、ほとんど考えにくい。(ほかにもいっぱい出てきて当たり前)

超音波で模擬実験を行った映像は、続きで・・・。

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